Archive for the ‘未分類’ Category

DV事件で逮捕

2020-07-02

DV事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

岐阜県可児警察署は、岐阜県可児郡御嵩町に住むVさんから、交際相手に暴力を振るわれたとの相談を受けました。
Vさんは被害届を出し、同署は交際相手の会社員のAさんを傷害の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Aさんの会社に体調不良で休みと伝えましたが、今後も身体拘束は続くのか心配しています。
Aさんの父親は、ネットで刑事事件に強い弁護士を探し、すぐに接見に行ってくれるよう頼みました。
(フィクションです。)

DV事件

配偶者や交際相手から振るわれる暴力を「ドメスティック・バイオレンス」(英語でdomestic violenceといい、略称でDVと呼ばれます)といいます。
ここで言う「暴力」には、殴る蹴るなどといった身体的暴力だけでなく、大声で怒鳴る、無視、付き合いを制限するなどの精神的暴力や、性行為の強要などの性的暴力も含まれます。

DVに関する法律に、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(以下、「DV防止法」といいます。)があります。
DV防止法における「暴力」は、身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を指します。
DV防止法は、DVそのものを処罰する規定をもたず、保護命令に違反した者について、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科すとの罰則が設けられています。
DV防止法の規制対象は、「配偶者からの暴力」であり、現に法律上又は事実上夫婦関係にある場合、および離婚後又は内縁解消後に元配偶者から引き続き受ける暴力が含まれていますが、恋人関係にあるにすぎない場合には、DV防止法の規制対象とはなりません。

DVそのものについては、刑法などが適用され、刑事手続の従って処分されることになります。
例えば、DVの種類によって、以下のような罪に問われる可能性があります。

①身体的暴力
暴行、傷害、傷害致死、殺人など

②精神的暴力
傷害、強要、脅迫、侮辱など

③性的暴力
強制性交等、強制わいせつなど

DV事件は家庭内で発生するものですので、なかなか外部の者が把握することが難しいため、被害者からの被害相談、被害届の提出、告訴や、被害者又は近隣住民からの通報を受けてDV事件が発覚することが多いです。
事件について把握すると、被害の状況や加害者と被害者との関係性から、警察が加害者を逮捕する可能性は大いにあります。

DV事件で逮捕されたら

DV事件の一当事者が、罪に当たる行為を行ったであろうという疑いがある場合、刑事事件として捜査を開始し、その者を被疑者として取り調べます。
被疑者と被害者とが夫婦関係又は恋人関係といった密接な関係にあることを考慮し、被疑者が逮捕される可能性は高いでしょう。
なぜならば、そのような密接な間柄であれば、被疑者が被害者に対して暴力や脅迫をして、供述を変えさせたり、被害届や告訴を取り下げるよう迫る可能性があるからです。

逮捕の要件としては、「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があります。
逮捕の理由」とは、「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」のことをいいます。
逮捕状は裁判官が発布します。
警察が集めた証拠を見て、裁判官が一応の疑いがあると認めるときに、逮捕の理由があるとします。
そして、「逮捕の必要性」についてですが、これは、被疑者が逃げたり、証拠を隠滅したりする危険があるということです。
被疑者に「逃亡するおそれ」や「犯罪の証拠を隠滅するおそれ」が明らかだと言えない場合、裁判官は、逮捕状を発布することはできません。
必要性の有無については、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重・態様その他さまざまな事情から判断されます。

以上のような逮捕の要件を満たしている場合には、警察は裁判官に逮捕状を請求し、裁判官は逮捕状を発布することになり、警察は逮捕状を持って被疑者を逮捕します。

DV事件の場合、被害者が加害者の身体拘束までを望んでいないこともあります。
そのような場合には、被害者である一当事者が、捜査機関に対して、身体拘束を望んでいないことや被害がそれほど重くないことを伝えることにより、加害者が釈放されることもあります。
しかし、被害者の処罰感情が強い場合、加害者が被害者と接触し、被害者の証言を無理やり変えさせたり、被害届を取り下げさせたりするおそれも考えられるため、逮捕に引き続き勾留となる可能性も少なくありません。

そのため、釈放された場合には、被疑者を監督する者がいること、被害者とは一切連絡をとらないこと、被害者には一切近づかないこと、身体拘束によって被る不利益が大きい事などを説得的に主張し、検察官に勾留請求しないよう、裁判官に勾留の決定をしないよう働きかける必要があります。

このような活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
DV事件で被疑者となりお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

少年事件の審判に向けた活動

2020-06-25

少年事件審判に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

岐阜県北方警察署は、窃盗の疑いで岐阜県本巣市に住むAくん(15歳)を逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、Aくんとの面会を求めましたが、警察からは「今は会えません。」と言われました。
ネットで少年事件について検索したところ、家庭裁判所で審判を受けることになることを知りました。
不安になったAくんの家族は、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

少年事件と審判

捜査機関が少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合であっても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認めるときには、原則、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
少年事件では、成人の刑事事件における起訴猶予や微罪処分といった捜査機関限りで事件を終了させることは認められていません。

事件が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は、調査の結果、審判を開くことが相当と認めるときには、審判開始決定をしなければなりません。
法律上、審判を開始するか否かの決定は、調査を行った上で判断されるものとなっていますが、実務上は、観護措置が取られている場合には、調査官への調査命令と同時に審判開始決定がなされています。
その後、調査を経て審判期日での審理を行い、終局決定により事件が終了します。

少年事件における審判は、一般的に、期日での裁判官による審理および判断の過程を指す言葉であると理解されています。
少年審判は、①裁判所が自ら主導的に事件の調査や審理を行う点、②裁判官が審判期日前から証拠に触れることができる点、そして、③少年審判で科される保護処分は教育的な措置である点、などといった刑事裁判とは異なる特徴を有しています。

審判の審理対象

少年審判では、「非行事実」および「要保護性」について審理されます。

「非行事実」は、刑事裁判における「公訴事実」に当たるものです。

一方、「要保護性」は、次の3つの要素から構成されるものと考えられています。

(1)犯罪的危険性
少年の性格や環境に照らし、将来再び非行に陥る危険性があること。

(2)矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって、再非行の危険性を除去できる可能性。

(3)保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。

以上の要素に該当する場合、要保護性が高いと判断されます。

この要保護性が審判での審理対象となることで、非行事実が軽微であっても、要保護性が高い場合には、少年院送致のような身体拘束を伴う重い保護処分に付されてしまうこともあります。
ですので、軽微な事案であっても、要保護性の解消に向けた活動を積極的に行う必要があります。

非行事実に争いがない場合、要保護性の解消に向けた活動が、付添人である弁護士が行う活動の大きなウェイトを占めることになります。
要保護性の解消に向けた活動を「環境調整」と呼びます。
環境調整は、少年が再び非行に陥ることがないよう、少年の内側および外側の環境を整えることです。
環境調整活動は、事案によって異なりますが、概ね次のような内容となります。

①少年本人への働きかけ(内部環境調整)
少年自身の内面を調整するものです。
少年が、事件について自分の心と向き合い、自分の考えや言動について省みるよう促し、被害者に対する謝罪の気持ちを持てるよう、事件の背景にある様々な問題を見つけ出し、その問題を解決する方法を探し出せるよう支援します。

②家庭環境の調整
家庭は、少年にとって最も身近であり、かつ、最も影響力のある環境です。
事件を起こした背景には、家庭環境に問題がある場合も少なくありません。
弁護士は、少年と保護者との間を取り持ちながら、何が問題であり、どのように今後対応していくべきかを少年と保護者と一緒に考え、見つけ出すよう働きかけます。

③学校・職場・交際関係の調整
学校や職場も、少年が生活をする上で欠かせない場所です。
事件後も、少年が引き続き学校や職場に行くことができるよう、関係者と協力する必要があります。
また、少年の交際関係が、非行を犯した要因のひとつであるケースも少なくありません。
不良関係をいかに解消するかについて、弁護士は、一方的にではなく、少年と話し合いながら、その方法を模索していきます。

このような活動により、要保護性が解消されることが期待できます。
少年事件審判に向けた活動は、少年事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
少年やご家族と連携して、少年の更生に適した処分となるよう尽力いたします。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

恐喝事件~恐喝と権利行使~

2020-06-18

恐喝権利行使について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、知人のVさんに現金20万円を貸していましたが、返済期日になってもVさんからの返済がなく、数度にわたって利息も含めて22万円を返済するよう催促していました。
業を煮やしたAさんは、知人男性3名を連れてVさんを取り囲み、拳を突き出すなどのそぶりを見せつつ、「利息を含めて22万円払え。払わんのやったら、痛い目みるで。」などと脅しました。
怖くなったVさんは、その場でAさんに22万円を支払いました。
後日、Aさんは、岐阜県山県警察署恐喝の疑いで逮捕されました。
Aさんは、「いつまでたっても貸した金を返さんから、返すよう言っただけや。」と供述しています。
(フィクションです。)

恐喝罪

刑法第249条は、恐喝罪について規定しています。

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

◇犯行の対象◇

恐喝罪の対象は、「人の財物」または「財産上不法の利益」です。
「人の財物」とは、他人の占有する財物です。
「財物」には、有体物でなくとも、物理的に管理可能なものは含まれます。
「占有」とは、人が物を実力的に支配する関係を意味します。
また、「財産上の利益」とは、財物以外の全ての財産上の利益をいいます。

◇行為◇

恐喝罪の成立には、相手方を恐喝し、その結果、相手方が畏怖し、相手方の財産的処分行為により財物の交付などを受ける、といった一連の因果関係が必要です。

①恐喝
恐喝は、脅迫または暴行により人を畏怖させることです。
この暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に至らず、相手方を畏怖させるに足りるもので構いません。
相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に達したときは、「強盗罪」となります。

②畏怖
恐喝行為により相手方が畏怖することが必要です。
畏怖させるに至らず、単に漠然たる不安の念を生じさせるに足る程度のものは「畏怖」には当たりません。

③財産的処分行為
相手方がその意思により、財物ないし財産上の利益を処分することです。
財産的処分行為と言うためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要となります。

◇結果◇

相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財物の占有が移転すること、あるいは、財産上不法の利益の取得または第三者にこれを取得させることが必要です。

◇故意◇

恐喝行為、畏怖、財産的処分行為、財物の交付などの認識・認容が必要です。
また、「不法領得の意思」も求められます。
「不法領得の意思」というのは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思」のことです。
条文には記載されてはいませんが、判例上認められた要件です。

脅すなどして借金を取り立てた場合~恐喝と権利行使~

他人に金銭を貸し付け、その返済が滞った場合、その返済を求める催促は、大小なりとも相手方に圧迫感を感じさせるものです。
催促の方法が行き過ぎた場合、恐喝罪の構成要件に該当してしまうことがあります。
しかし、この場合、行為者は債権者として返済を求める権利を有しているため、これが違法性にどのように影響するのかが問題となります。
つまり、恐喝罪の構成要件に該当する場合であっても、それが違法ではない(=違法性が阻却される)のであれば、犯罪は成立しないことになります。

上のケースを検討していましょう。
Aさんは、Vさんに対し、Aを含めた男性4名でVさんを取り囲んだ上、拳を突き出すなどのそぶりを見せつつ、支払わないと暴行を加える旨の告知をしており、怖がったVさんは22万円をAさんに支払っているので、恐喝罪の構成要件に該当すると考えられます。
しかし、Aさんは、Vさんに対し、貸付金の返済を求める正当な権利を行使しており、恐喝行為は、その権利行使の手段として行われています。
ここで問題となるのは、権利行使の手段として用いられている恐喝行為が、社会的に許容される行為となるのか、という点です。
権利行使の手段としての行為が、社会的に許容されるかどうかは、①権利の範囲内か、②その方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えないか、という観点から検討され、①および②を満たすときに違法性が阻却されることになります。

権利行使の手段としての行為が違法性阻却となるためには、まず、権利行使の手段としての行為が、「権利の範囲内の行為」であることが必要です。
例えば、価格1円相当の松を盗んだ者に対し、損害賠償として45円を支払わないと告訴すると話して支払わせた事案では、権利の範囲外の要求をしたとして、違法性が認められています。(大判大3・4・29)

次に、権利行使の手段としての行為が違法性阻却となるためには、「社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えていない」ことが必要です。
判例では、十数名で押しかけ、約9時間にわたって社長を取り囲んで「腕ずくでも取る」などと威迫した案件では、社会的に相当な程度を超えているとして、違法性は阻却されませんでした。(最判昭27・5・13)

以上のことを考慮して、Aさんの行為について違法性が阻却されるのかを考えてみましょう。
まず、Aさんは、利息を含めて22万円の返済を求める権利を有していたのに対し、その範囲内で支払いを要求しているので、その行為は、権利の範囲内のものと言えるでしょう。
しかし、Aは、男性3名を連れてVさんを取り囲んだ上、拳を突き出すなどのそぶりを見せ、「払わんのやったら、痛い目みるぞ。」と言って脅しています。
これは、多数人での脅迫行為であり、社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えていると言え、違法性は阻却されないと考えられます。

返済の催促であっても、その程度によっては、恐喝罪が成立する可能性があります。

ご家族が恐喝事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が、無料法律相談初回接見サービスをご提供いたします。
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保釈で身柄解放

2020-06-11

保釈制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

 

~事例~

特殊詐欺事件に受け子として関与したとして、Aさんは岐阜県中津川警察署に逮捕されました。
Aさんは、逮捕後、勾留が決定し、長期の身体拘束を余儀なくされています。
AさんやAさんの家族は、いつ身柄解放されるのか心配です。
(フィクションです。)

特殊詐欺事件における身体拘束

特殊詐欺事件に関与し逮捕された場合、その後勾留となり長期間の身体拘束となる可能性は非常に高いと言えるでしょう。
特殊詐欺は、組織的に行われていることが多く、捜査に時間がかかることや、共犯者との罪証隠滅を図るおそれがあると判断され易く、ほとんどの場合で、勾留、そして勾留延長が決定します。
また、関与した事件が1件のみという場合は少なく、余罪が発覚し、それについて逮捕・勾留され、身体拘束の期間が長期化する傾向にあります。

特殊詐欺事件のように長期の身体拘束が見込まれる事件であっても、保釈制度を利用して身柄解放となる可能性はあります。

保釈制度とは

保釈は、勾留されている被告人を、一定額の保釈保証金を納付することを条件に、一時的に釈放する制度です。
保釈が許可された場合、被告人はもとの生活を送りながら裁判を受けることができますので、起訴前には身柄解放が困難である事件であっても、起訴後保釈により釈放となる可能性はあります。

保釈には、(1)権利保釈、(2)裁量保釈、(3)義務的保釈、の3種類あります。

(1)権利保釈

一定の事由がある場合を除いて、被告人に「権利」として保釈が認められるものです。
一定の事由とは、次の6つです。
①死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁固に当たる罪を犯した場合。
②過去に、死刑、無期又は長期10年を超える懲役・禁固に当たる罪について有罪判決を受けたことがある場合。
③常習として、長期3年以上の懲役・禁固に当たる罪を犯した場合。
④罪証隠滅のおそれがある場合。
⑤被疑者や証人に対し、危害を加えるおそれがある場合。
⑥氏名又は住所が明らかでない場合。

特殊詐欺事件の場合、詐欺罪又は窃盗罪に当たることが多く、その法定刑は、詐欺罪で10年以下の懲役、窃盗罪で10年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、どちらとも短期1年以上の懲役に当たる罪となり、上の①に該当することになります。
また、組織犯罪のため、④の罪証隠滅のおそれにも該当すると判断される可能性はあります。

(2)裁量保釈

権利保釈の除外事由に該当する場合であっても、裁判所の裁量によって保釈が許可されることがあります。
これが「裁量保釈」と呼ばれる保釈です。
裁判所は、「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認める場合には、職権で保釈を許すことができる」(刑法90条)のです。

被告人には、逃亡・罪証隠滅のおそれがないこと、そして、被告人が身体拘束を受けることで被る不利益について、裁判官に納得してもらうよう主張することが重要です。

(3)義務的保釈

不当に勾留が長引いたときに、請求又は職権によって保釈されるものです。

保釈請求がなされると、裁判官は、検察官に保釈に関する意見を聞いた上で、保釈を許可するか否かを判断します。
保釈許可決定が出された場合、裁判所に保釈保証金を納めることによって、被告人が釈放されます。

保釈請求をするタイミングも重要です。
余罪が複数ある場合、1件目で起訴された直後に保釈請求し、許可されたとしても、その後別件で逮捕されてしまっては、保釈をした意味がありません。
ですので、いつ保釈を請求するのか、捜査状況を考慮して見極める必要があります。

特殊詐欺事件のように長期の身体拘束が見込まれる事件であっても、保釈を利用して釈放される可能性はあります。
ですので、特殊詐欺事件でご家族が逮捕されてお困りの方は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺事件を含む刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

銃刀法違反と軽犯罪法違反

2020-06-04

銃刀法違反軽犯罪法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県瑞穂市の公園のベンチに座っていたAさんは、巡回中の岐阜県北方警察署の警察官に職務質問を受けました。
所持品検査を受けた際、持っていたカバンから刃物が見つかりました。
警察官は、Aさんに警察署に同行するよう求めました。
(フィクションです。)

刃物を携帯する行為~銃刀法違反と軽犯罪法違反~

ナイフをカバンや車のデッシュボートに入れて外に出た際、たまたま警察官からの職務質問にあい、持っていたナイフが見つかり、取調べを受けることになった…、という話はそう少なくありません。
なかでも、キャンプのために持って行ったナイフをそのまま車に置いておいたケースが多いようです。
ナイフなどの刃物を携帯していた場合、刃物の種類によっては、銃刀法違反、もしくは軽犯罪法違反に当たる可能性があります。

(1)銃刀法違反となる場合

銃刀法は、「銃砲刀剣類所持等取締法」の略称で、銃砲・刀剣類の取り締まりを目的として法律です。
銃刀法は、法令に基づき職務のための所持する場合などを除き、原則として銃砲・刀剣類の所持を禁止しています。
「刀剣類」というのは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり、なぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち、そして、45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフのことをいいます。
このような「刀剣類」を「所持」することが禁じられており、違反した場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
「所持」とは、人が物を補完する実力的支配関係を内容とする行為であり、事実上、管理、支配する行為を意味します。

銃刀法は、「刀剣類」の「所持」を禁止しているだけでなく、「刃物」の「携帯」についても規制の対象としています。

対象となる「刃物」は、その用法において人を殺傷する性能を有し、銅又はこれと同程度の物理的性能を有する材質でできている片刃又は両刃の器物で刀剣類以外のものをいい、刃体の長さが6センチメートルを超えるものです。
ただし、刃体の長さが6センチメートルを超えるものであっても、銃刀法の規制から除外されるものがあります。
はさみ:刃体の長さが8センチメートル以下で、刃体の先端が著しく鋭くなく、刃が鋭利でない。
折り畳み式ナイフ:刃体の長さが8センチメートル以下で、刃体の幅が1.5センチメートル以下、刃体の厚みが0.25センチメートル以下、開刃した刃物をさやに固定させる装置を有しない。
くだものナイフ:刃体の長さが8センチメートル以下、刃体の厚みが0.15センチメートル以下、刃体の先端部が丸みを帯びている。
切出し:刃体の長さが7センチメートル以下、刃体の幅が2センチメートル以下、刃体の厚みが0.2センチメートル以下。

規制対象の刃物を「携帯」する行為が禁止され、それに違反した場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
「携帯」とは、日常生活を営む自宅ないし居室以外の場所において、身体に帯びるか直ちに使用し得る状態で自己の身辺に置き、その状態をある程度の時間継続することをいいます。
業務その他正当な理由による場合には、違反となりませんが、護身用として携帯する場合は正当な理由には当たりません。

軽犯罪法違反

銃刀法の規制対象外の刃物を所持していた場合でも、軽犯罪法に触れる可能性があります。

軽犯罪法第1条2号は、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」に拘留又は科料を科すとしています。
銃刀法における「刀剣類」や「刃体の長さが6センチメートルを超える刃物」に当たらないものも、軽犯罪法で規制される器具に該当することがあります。
そのような器具を「隠して携帯」することが禁止されています。
「隠して携帯」するというのは、普通では人目に触れにくいような状態、例えば、ポケット、着衣、カバン、バッグに入れるなどして携帯することです。

このように、刃物を携帯することで銃刀法あるいは軽犯罪法に違反することもあるのです。

銃刀法違反または軽犯罪法違反で取調べを受けて対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。

少年事件における弁護士の役割

2020-05-28

少年事件における弁護士の役割について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

岐阜県羽島市に住む高校1年生のAくんは、市内の公園にあるトイレで女子児童にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ容疑で岐阜県羽島警察署に逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの母親は、今後どのような処分を受けることになるのか、被害者への対応をどのようにすべきか分からず困っています。
Aくんの父親が急いでインターネットで少年事件に強い弁護士を探し、相談の電話を入れました。
(フィクションです。)

少年事件の流れ

20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が刑罰法令に触れる行為を行った場合、捜査段階では、基本的に刑事訴訟法が適用されることになります。
そのため、少年であっても、成人の刑事事件と同様に、捜査段階で身体が拘束される可能性はあります。
ただし、少年が14歳未満の場合、刑事責任が問われませんので犯罪は成立せず、被疑者として逮捕されることはありません。

身体拘束が少年に与える影響の大きさから、少年の身体拘束については、成人とは異なる手続がとられます。

①検察官は、勾留に代わる観護措置をとることができます。(少年法43条1項)
②検察官は、やむを得ない場合でなければ、勾留を請求することができません。(少年法43条3項)
③勾留状は、やむを得ない場合でなければ発することができません。(少年法48条1項)
④少年鑑別所を勾留場所とすることができます。(少年法48条2項)
⑤少年を警察留置施設に勾留する場合であっても、少年を成人と分離して収容しなければなりません。(少年法49条3項)

少年事件については、捜査機関が捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があると判断した場合、すべての事件を家庭裁判所に送致することとなっています。(少年法41、42条)
少年事件では、成人の刑事事件のように起訴猶予に相当する処分はありません。
また、犯罪の嫌疑がなくとも、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある場合には、「ぐ犯事件」として送致されることがあります。

家庭裁判所に事件が送致されると、家庭裁判所の調査官による調査、少年審判を経て最終的な処分が言い渡されます。
送致後、家庭裁判所はいつでも「観護措置」を決定することができます。
観護措置は、家庭裁判所が調査・審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置です。

調査官は、審判の前に、少年事件の調査を行います。
調査官は、少年や保護者と面会したり、学校や被害者に文書等で照会を行うなどして調査を行い、調査の結果とそれに基づく処遇意見をまとめた少年調査票を作成し、裁判官に提出します。

審判は、非公開で行われ、非行事実と要保護性について審理されます。
そして、審判において、裁判官は少年に対して処分を言い渡します。

弁護士の役割

弁護士は、捜査段階では弁護人として、家庭裁判所送致後は付添人として、少年の権利や利益を保護しつつ、少年が更生できるよう支援します。

(1)身柄解放活動

先述したように、少年であっても、捜査段階で逮捕・勾留(又は勾留に代わる観護措置)され、その身柄が拘束される可能性があります。
また、家庭裁判所に送致された後は、観護措置がとられ、1か月ほど少年鑑別所に収容されることもあります。
このように、少年が長期間の身体拘束を受ける可能性がありますが、それによって少年が被る不利益は小さくありません。
そこで、長期の身体拘束を避けるべく、弁護士は身柄解放活動を行います。
逮捕された場合には、勾留の要件を満たしていないことや勾留を回避すべき事情があることを意見書を通して主張し、検察官に勾留請求しないよう、裁判官に対しては勾留を決定しないよう働きかけます。
家庭裁判所に送致された際にも、観護措置の要件を満たしていないことや、観護措置を回避すべき事情があることを裁判官や調査官に伝え、観護措置をとらないよう働きかけます。

このような働きかけにも関わらず勾留や観護措置がとられた場合には、勾留に対する準抗告申立や観護措置決定に対し異議申立を行います。

(2)弁護活動

少年は、成人以上に法的知識に乏しく、取調べおいては捜査機関の誘導に乗りやすいといった傾向があります。
そのため、弁護士は、少年にも理解できるように、丁寧に分かりやすい言葉や表現で手続や少年に保障されている諸権利について説明し、取調べでの対応についてのアドバイスします。
そうすることで、誘導による誤った内容の調書が作成されたり、不適切な取調べや調査が行われたりしないように努めます。
特に、身体拘束を受けている少年は、精神的に不安定になることが多いため、弁護士は頻繁に接見をし、法的支援だけでなく、少年の心身の安定を図るよう精神的な支援も行います。

(3)環境調整

少年が再び犯罪や非行を犯すことがないよう、少年の環境を整えることも弁護士の担う重要な役割のひとつです。
少年自身が、事件と向き合い、事件を起こした原因や自分の抱える問題、そして解決策を見つけることができるよう支援します。
また、被害者がいる場合には、謝罪や被害弁償等を行い、被害者に対応することを通じて、少年が真摯に反省するよう手助けします。
そして、少年の家族や学校、職場などと協力し、少年が更生できる環境を整えていきます。
このような環境調整は、審判の審理対象である要保護性の解消にもつながるため非常に大切な活動です。

以上、弁護士少年事件において様々な役割を担っており、少年の更生を考える上ではキーパーソンとなり得る存在と言えるでしょう。

お子様が事件を起こし、対応にお困りの方は、少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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覚醒剤取締法違反(所持)事件で逮捕

2020-05-21

覚醒剤取締法違反(所持)事件で逮捕

覚醒剤取締法違反(所持)事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

岐阜県可児市のマンションに暮らしているAさんは、、岐阜県可児警察署の家宅捜索を受けました。
警察は、Aさんの部屋で覚醒剤と思われる薬物を見つけました。
家宅捜索後、Aさんは覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕されました。
Aさんは、「交際相手が部屋に置いていったもので、私のものではない。覚醒剤だとは知らなかった。」と供述しています。
(フィクションです)

覚醒剤取締法違反(所持)について

覚醒剤取締法は、覚醒剤及び覚醒剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用について必要な取締を行う法律です。

覚醒剤取締法は、原則的に覚醒剤の所持を禁止しています。
覚醒剤所持罪は、①覚醒剤を、②みだりに、③所持すること、によって成立します。

①覚醒剤

覚醒剤取締法の規制の対象となる「覚醒剤」とは、
(1) フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類。
(2)(1)に掲げる物と同種の覚せい作用を有する物であつて政令で指定するもの。
(3)(1)、(2)に掲げる物のいずれかを含有する物。

②みだりに

「みだりに」とは、社会通念上正当な理由が認められないことを意味します。
覚醒剤取締法第14条に規定されるような除外事由が存在するときは、覚醒剤所持罪の構成要件該当性が阻却され、本罪は成立しません。

③所持

「所持」の基本的な概念について、判例によれば、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいうのであって、その実力支配関係の持続する限り所持は存続するものというべく、かかる関係の存否は、各場合における諸般の事情に従い社会通念によって決定されるものである」と解されます。(最大判昭30・12・21)

また、覚醒剤所持罪が成立するためには、故意、つまり、覚醒剤を自己の実力的支配内に置くことを認識していること、が必要となります。

覚醒剤取締法が禁止する覚醒剤の「所持」は、「覚醒剤を自己の実力的支配内に置くこと」です。
ですので、覚醒剤所持罪が成立するために必要な故意は、「覚醒剤を自己の実力的支配内に置くことを認識していること」となります。

上のケースのように、他人の覚醒剤を所持していたような場合では、被疑者・被告人が、「他人が勝手に置いていったものだ。」とか、「それが覚醒剤とは知らなかった。」と故意を否定することが少なくありません。
しかしながら、所持は、あくまで覚醒剤を自己の実力的支配内に置く行為であればよく、積極的に覚醒剤を自己又は他人のために保管する意思や、自ら所有し又は使用、処分する意思といったもの、どこかに隠すといった態様であることまでは必要ではありません。
覚醒剤と知りつつ自己の実力的支配内に置けば、それで覚醒剤所持罪は成立し得ることになります。
「覚醒剤とは知らなかった。」と故意を否認するケースも多いのですが、覚醒剤であると確信していた場合だけでなく、「覚醒剤かもしれないとの認識・認容を有していた」場合も未必の故意が認められることになります。

そのため、Aさんが、「交際相手が置いて行ったもの。」と述べていますが、覚醒剤がAさんの物ではなく他人の物であっても、覚醒剤所持罪の成立には、当該覚醒剤をAさんの実力的支配内に置いていることを認識・認容しているのであればよく、積極的に交際相手の覚醒剤を保管する意思などは必要ありません。
また、Aさんが、交際相手が置いていった物について、「覚醒剤かもしれないけど…。」と思いつつ所持していたのであれば、覚醒剤所持罪の成立に必要な故意があるものと判断されます。

覚醒剤取締法違反で逮捕された場合、逮捕に引き続き勾留が付される可能性が非常に高く、身体拘束が長期化することが見込まれます。
また、弁護人以外との接見を禁止する接見禁止に付されることもあります。

ご家族が覚醒剤取締法違反で逮捕されてお困りであれば、薬物事件を含めた刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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落書きで建造物損壊事件

2020-05-14

落書きで建造物損壊事件

落書きで建造物損壊事件となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

ある日、岐阜県岐阜市にあるビルの外壁に落書きされているのを、ビルの管理者が発見しました。
管理者からの被害届を受理した岐阜県中警察署は、捜査を開始しました。
後日、同警察署は、市内に住むAさんとBさんを建造物損壊の疑いで逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、すぐに対応してほしいと刑事事件に強い弁護士に連絡を入れました。
(フィクションです。)

落書きで建造物損壊罪が成立する場合

いたずらのつもりで、建物の壁などにスプレーなどで落書きをした場合、建造物損壊罪が成立し、刑事事件として取り扱われる可能性があります。

建造物損壊罪

建造物損壊罪は、他人の建造物または艦船を損壊した場合に成立する罪です。(刑法第260条前段)

◇客体◇
建造物損壊罪の客体は、他人の建造物または艦船です。
「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物のことで、屋根があり、壁や柱で支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることができるものをいいます。(大判大正3・6・20)
敷居や鴨居のように建造物の一部であり、建造物を損壊しなければ取り外すことのできない物を損壊する場合は、建造物損壊罪が成立しますが、雨戸や板戸のように損壊することなく自由に取り外すことができる物を損壊する場合は、建造物損壊罪ではなく器物損壊罪が成立すると、過去の裁判例では理解されてきました。
加えて、最高裁は、建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほかに、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合的に考慮して判断すべきとしています。(最決平19・3・20)

ビルの外壁は、ビルを損壊しないと取り外すことはできませんので、建造物に当たります。

「艦船」とは、軍艦または船舶のことをいいます。

◇行為◇
建造物損壊罪の行為である「損壊」とは、建造物または艦船を物理的に損壊することに限らず、その効用を害する一切の行為をいいます。
建造物等の使用を全く不能にするまでの必要はありません。
判例では、多数枚のビラを建造物に貼付した事件で建造物等損壊罪の成立が肯定されているもの(最決昭41・6・10)、公衆トイレへの落書きについて、「程度が酷く、外観ないし美観を著しく汚損し、原状回復に相当の困難を生じさせた」として建造物損壊罪の成立を肯定したもの(最決平18・1・17)があります。

このことから、ビルの外壁への落書き行為も、その程度や建造物の使用目的が考慮され、「損壊」に当たるとされる可能性はあります。

器物損壊罪との違い

損壊した対象が建造物または艦船ではない場合、建造物損壊罪ではなく器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪は、公用文書等、私用文書等、建造物等以外の他人の物を損壊または傷害した場合に成立する罪です。(刑法第261条)

◇客体◇
器物損壊罪の客体は、公用文書等、私用文書等、建造物等以外のすべての他人の物です。
動産、不動産を広く含みます。
客体の違いが、建造物損壊罪と器物損壊罪とを区別する特徴の1つです。

◇法定刑◇
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
一方、建造物損壊罪は、5年以下の懲役と、罰金や科料はありません。
これは、客体の重要性と人を死傷させる危険性を鑑み、器物損壊罪を加重した罪だからです。

◇非親告罪◇
器物損壊罪は、被害者などの告訴権者の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。
ですので、告訴権者が告訴をしない、あるいは告訴をしたけれどもそれを取り下げれば、起訴されることはありません。
他方、建造物損壊罪は非親告罪です。

いたずらでの落書きによっても、建造物損壊罪が成立する場合もあります。
建造物損壊事件でご家族が逮捕されてしまったのであれば、できるだけ早期に刑事事件に強い弁護士に相談・依頼し、身柄解放や寛大な処分に向けた活動を行うのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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偽計業務妨害で逮捕

2020-05-07

偽計業務妨害で逮捕

偽計業務妨害で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

岐阜県豊下呂市の温泉地で宿泊予約の無断キャンセルが相次ぐ事件が起こりました。
温泉地にある5つの旅館やホテルに10名の宿泊を同時に予約したものの、予定日には姿を見せることなく、無断キャンセルとなりました。
このような無断キャンセルは、その後も数回続きました。
無断キャンセルにより大きな損害が出た旅館やホテル側は、岐阜県下呂警察署に被害届を出しました。
後日、県外に住む男性が、偽計業務妨害の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)

飲食店や宿泊施設における無断キャンセルは少なくないようです。
しかし、その損害額は小さくありません。
上のケースにおいて、Aさんは偽計業務妨害罪に問われています。
今回は、偽計業務妨害罪について説明しましょう。

偽計業務妨害罪とは

偽計業務妨害罪は、刑法233条に以下のように規定されます。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

本条の前段は、信用毀損罪について規定しており、偽計業務妨害罪は後段に規定されています。

偽計業務妨害罪は、
①虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、
②業務を妨害した
場合に成立します。

①妨害の手段:虚偽の風説の流布・偽計

「虚偽の風説を流布する」とは、客観的事実に反する事実を不特定または多数の者に伝播することです。
直接少数の者に伝播した場合であっても、その者を介して多数の者に伝播するおそれがあるときには、これに当たります。

また、「偽計」とは、人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することをいいます。
秘密におこなわれても、公然とおこなわれても構いません。
「偽計」に当たるとされたものとしては、
・外面からはうかがい得ない程度に、漁場の海底に障害物を沈めておき、漁業者の漁網を破損させて漁獲を不能にした事例。(大判大3・12・3)
・デパートに販売のため陳列されている寝具に縫い針を差し込んだ事例。(大阪地判昭63・7・21)
・他人名義を使って商店に対して商品の配達を依頼する旨の虚偽の電話をかけ、店員に配達させた事例。(大阪高判昭39・10・5)
・電話通話料金課金に用いる度数計器の作動を不可能にする「マジックフォン」を電話機に設置等した事例。(最決昭59・4・27)
などがあります。

②業務の妨害

妨害される「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき継続して行う事務・事業をいいます。
「業務」であるためには、社会生活上の活動であることが必要となるので、個人的な活動や家庭生活上の活動は含まれません。

この「業務」に「公務」が含まれるのかが問題となりますが、これについて現在の判例は、権力的・支配的性質の公務は業務妨害罪の業務に含まれないが、非支配的公務、特に私企業的公務は含まれ、非支配的公務に対しては、公務執行妨害罪と業務妨害罪とが競合的に成立し得るとの立場をとっています。
権力的公務であっても、偽計に対しては自力での妨害排除機能が認められないため、偽計業務妨害罪の成立を認める裁判例は多くあります。
例えば、ネットの掲示板に無差別殺人を行うとの虚偽の予告を行い、警察を警戒出動させて本来の警ら業務等を妨害した事例は、偽計業務妨害罪の成立を認めています。(東京高判平21・3・12)

さて、上のケースでは、男性は複数の旅館やホテルに10名の団体客での宿泊予約を入れていますが、予約した宿泊日には姿を現しておらず、宿泊の準備をしていた旅館やホテルは大きな損害を被っています。
嘘の宿泊予約によって、宿泊施設の業務が妨害されています。
ですので、上の①と②の要件は満たしていると考えられます。

偽計業務妨害は、故意犯ですので、最初から虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害しよう(もしくは、妨害してもしまうかもしれないけど、まあいいか)と思って犯行におよんだ場合でなければ成立しません。
つまり、宿泊するつもりで幾つかの宿泊施設を予約し、キャンセルするのを忘れたと客観的な証拠から立証することが可能な場合には、故意がなく偽計業務妨害罪は成立しないことになります。
しかし、Aさんの場合、複数の宿泊施設に同時に宿泊予約を入れていることから、明らかに宿泊する意思がないと考えられる可能性が高いでしょう。

偽計業務妨害事件を起こした場合、逮捕される可能性はあります。

偽計業務妨害で逮捕された場合、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察官に送致するかを決めます。
検察官に送致されると、検察官が被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放する、若しくは、裁判官に勾留請求を行います。
検察官からの勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留するか否かを判断します。
勾留となると、検察官が勾留請求した日から原則10日間、延長されると最大で20日間の身体拘束を余儀なくされることになります。
長期間の身体拘束は、被疑者にとって堪えがたい不利益となりますので、できる限り早期に釈放されることが望まれます。

もし、あなたの家族が偽計業務妨害で逮捕されてお困りであれば、今すぐ刑事事件に精通する弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、偽計業務妨害を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。

業務上横領で事件化阻止

2020-05-05

業務上横領で事件化阻止

業務上横領で事件化阻止に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、岐阜県多治見市のX社で経理を担当していましたが、ギャンブル好きが高じて生活費に困っていました。
そこで、Aさんが管理している会社の金を着服することを考え付きました。
Aさんは、1回につき1万円を着服し、何十回も繰り返していました。
1年後、Aさんの不正に気付いたX社は、Aさんに対して横領した金額を返済するよう迫り、返済できない場合は岐阜県多治見警察署に被害届を出すと言っています。
(フィクションです。)

業務上横領罪について

刑法第253条は、業務上横領罪について以下のように規定しています。

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。

業務上横領罪は、
(1)業務上
(2)自己の占有する他人の物を
(3)横領
する罪です。

◇犯行の主体◇

業務上横領罪の主体は、「他人の物を業務上占有する者」に限られます。
「他人の物を占有する者」というのは、「委託に基づいて他人の物を占有する者」であり、委託に基づかないで自己の占有に帰した物を自己の物とする場合は、遺失物等横領罪となります。

「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行う事務であり、他人の物を占有保管することを内容とするものをいいます。
Aさんのように現金出納担当者は、「他人の物を業務上占有する者」に当たります。

◇犯行の対象◇

業務上横領罪の対象は、「自己の占有する他人の物」です。
「他人の占有する物」を領得した場合は、横領ではなく窃盗になります。
「占有」とは、事実上・法律上支配している状態のことです。
「他人の物」とは、他人の所有に属する財物をいいます。
つまり、「自己の占有する他人の物」というのは、自分(犯人)が事実上又は法律上支配している他人の所有する財物のことを指します。
業務上横領罪では、所有者ではない者が預かっているということが前提となっています。

◇行為◇

業務上横領罪の行為は「横領」することです。
「横領」とは、「自己の占有する他人の物などを不法に領得すること」、つまり、「他人の物などの占有者が、権限なく、その物に対し、所有者でなければできないような処分をする意思を実現する行為」をいいます。
例えば、売却、贈与、交換、質入、抵当権の設定、譲渡担保の設定、債務弁済のための譲渡、預金、預金の引出し、貸与、小切手の換金、費消、着服、拐帯、毀棄隠匿などが「横領」に当たります。

◇不法領得の意思◇

「不法領得の意思」は、
業務上横領罪を規定する条文には明記されていませんが、判例上認められた要件です。
「不法領得の意思」は、所有者を排除する意思とその物の効用を享受する意思のことです。
横領罪における不法領得の意思は、「委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」をいいます。
ですので、一時使用の目的で、他人の物の占有者がその物を使用した場合、原則として、所有者でなければできないような処分を行ってはいないため、横領には当たらないことになります。
また、委託者本人のために目的物を処分する場合は、所有者でなければできないような処分を行っておらず、横領には該当しません。

業務上横領事件で事件化を阻止するには

業務上横領事件では、被害者は警察に相談する前に、横領された物を返済するよう行為者に求めることが多いです。
なぜなら、警察に相談し、行為者が何らかの刑事罰を受けたとしても、被害者には横領された物が返済されないことがあるからです。
会社の経営にも支障をきたすため、多くの場合、被害者は横領された物を取り返すことを優先します。
そのため、被害者に横領が発覚した直後に警察が介入しないこともめずらしくありません。

そこで、事件を早期に穏便に解決するためには、警察が介入する前に、被害者への被害弁償を行い、示談を成立させることにより、刑事事件化を阻止するよう動く必要があります。

そんなときには、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
当事者同士の交渉では、互いに感情的になったり、横領に関係のない支出までも横領したものとして扱われ、交渉が難航することもあります。
しかし、弁護士を介して交渉を行うことにより、冷静に交渉を進めることができますし、刑事処罰を求めない旨の合意を成立させることも期待できます。

業務上横領事件で刑事事件化阻止を目指すなら、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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