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傷害事件:不作為による幇助
不作為による幇助について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、岐阜県不破郡垂井町のアパートに、内縁の夫Bさんと長女Vちゃん(2歳)と3人で暮らしていました。
Bさんは、Vちゃんが言うことを聞かない時に、しつけと称してVちゃんに対して殴るなどの暴行を加えていました。
Aさんは、Bさんの行為を知っていましたが特にそれを止めることはありませんでした。
ある日、岐阜県垂井警察署は、Vちゃんに暴行を加えて怪我を負わせたとして、Bさんを傷害の容疑で逮捕しました。
その後、Aさんも警察から取調べを受けることになりました。
(フィクションです。)
正犯と共犯
「正犯」とは、自ら各犯罪の基本的構成要件に該当する行為を行う者をいいます。
基本的構成要件というのは、法律に規定されている構成要件、つまり、どういう行為が犯罪にあたるかという犯罪の類型のことです。
例えば、傷害罪であれば、「他人の身体を傷害すること」です。
BさんがVちゃんに暴行を加えて怪我を負わせたのであれば、Bさんは自身でVちゃんの身体を傷害したと言え、BさんはVちゃんに対する傷害の正犯となります。
しかしながら現実には、1人で犯罪を実現する場合だけでなく、2人以上で協力して犯罪を実現する場合も少なくありません。
このように、2人以上の行為者が協力して犯罪を実現させる場合を「共犯」といいます。
共犯には、「共同正犯」、「教唆」、そして「幇助」の3つの類型があります。
共同正犯は、2人以上共同して犯罪を実行することを意味し、正犯として取り扱われます。
教唆は、人を教唆して犯罪を実行させることであり、正犯の刑を科すものとされています。
幇助とは
共犯の第3類型の「幇助」とは、「正犯を幇助」することであり、「従犯」として取り扱われ、正犯の刑を減軽した刑が科されることになります。
「幇助」は、正犯に物理的・精神的な援助や支援を付与することで、その実行行為の遂行を促進し、構成要件該当事実の惹起を促進することを意味します。
つまり、手助けが正犯の犯罪実現に役立ったという場合でなければ幇助犯は成立しません。
また、幇助の意思がない場合にも幇助犯は成立しません。
不作為による幇助
不作為による幇助は、一般的に、犯罪を防止するべき作為義務がある者が、この義務に違反して犯罪の防止を行ったときに成立するとされています。
つまり、保障人に義務づけられる措置の不履行が認められ、その措置を行わないことによって犯行を容易にし、これら客観的要件を認識している場合に幇助犯が成立することになります。
この点、保障人に義務付けられる措置とは、どのようなものをいうかが問題となりますが、少なくとも正犯による犯罪の実現を防止することができるような行為、犯罪の実現を困難にすることが可能な行為を行うことが求められます。
そのため、Aさんは、自らVちゃんに手を出してはいないものの、Bさんの暴力からVちゃんを守るため、言葉による制止だけでなく、体を張って阻止することや、その場で犯罪の実現を阻止し得る行為を行わなければならない立場であったとされるでしょう。
このように、何もしないことが犯罪を手助けしたとして幇助犯が成立する場合もあります。
また、児童虐待事件においては、事案によっては幇助犯ではなく共同正犯(共謀共同正犯)となることもありますので、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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殺人:予備罪と未遂罪
殺人の予備罪と未遂罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県不破郡関ケ原町の会社から、「会社の敷地内にナイフをもってわめいている男性がいる。」と110番通報がありました。
通報を受けて現場に駆け付けた岐阜県垂井警察署の警察官は、セキュリティがかかり閉まった玄関ドアの外でナイフを持っていた男性を発見し、銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕しました。
男性は、調べに対して「社長に恨みをもっており、殺そうと思って会社に行った。」と供述しています。
(フィクションです)
上の事例では、男性が会社の社長を殺す意思(殺意)に基づき、凶器であるナイフを手にして会社へ出向きました。
しかし、社長を殺すという目的は果たせていませんし、社長と会うことすらできていません。
このような場合には、銃刀法違反以外にも罪が成立する可能性はあるのでしょうか。
殺人未遂罪
犯罪の実行に着手して、これを遂げなかった場合を「未遂」といいます。
「実行の着手」とは、実行行為の一部を開始することをいいます。
未遂罪の成立には、「犯罪の実行に着手」することが必要となります。
この実行の着手の有無をどのような基準を基に判断するのかが問題となります。
実行の着手時期の判断基準について、様々な学説がありますが、法益侵害の現実的危険の発生を基準に実行の着手時期を決定する「実質的客観説」が通説となっています。
判例は、行為者の犯罪計画全体に照らし、法益侵害の危険が切迫した時点に実行の着手を求める見解に立っています。
殺人罪についての判例で、被告人らの殺害計画は、クロロホルムを吸引させて被害者を失神させた上、その失神状態を利用し、被害者を港まで運び車ごと海中に転落させて溺死させるというものであって、第1行為(クロロホルムを吸引させる行為)は第2行為(港まで運んで車を転落させる行為)を確実かつ容易におこなうために必要不可欠なものであったといえること、そして、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存在しなかったと認められること、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、被告人らが第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるため、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当だとしたものがあります。(最決平16・3・22)
つまり、最高裁は、クロロホルムの吸引行為が海中への転落行為に密接な行為であり、それ自体殺害に至る客観的な危険性があることから、クロロホルムの吸引行為を開始した時点で殺人の実行の着手があったものと認めています。
殺人予備罪
「予備」とは、犯罪の実現を目的として行われる謀議以外の方法による準備行為をいいます。
予備罪は、特定の既遂犯を実現する目的でなされる準備行為を処罰するものです。
予備を処罰する規定には、殺人予備罪があります。
刑法201条
第199条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
殺人の実行を可能にし、または容易にする準備行為が「殺人予備罪」となります。
判例では、人を殺害する目的で包丁を携えて被害者宅に侵入し、被害者の姿を探し求めて屋内を通り歩いた行為、他人から殺人の用に供するための青酸カリの調達入手方の依頼を受け、これを入手してその他人に手交する行為、殺人を意図して被害者等の日常通行する農道の道端に毒入りジュースを置く行為は殺人予備罪に該当するとしています。
さて、上の事例について検討してみますと、Aさんは、会社社長を殺すつもりでナイフを持って会社の敷地内に侵入しています。
しかしながら、会社の玄関の外でAさんの身柄が確保されており、Aさんが会社社長に会うことすらなく、会社社長を殺害することができませんでした。
そのため、ナイフを持って会社の敷地内に侵入した時点では、社長の殺害に至る客観的な危険性があったとは言えず、実行行為の着手があったとは認められないでしょう。
殺人未遂罪は成立し難いでしょう。
一方、会社社長を殺す意思のもとナイフを所持して会社社長がいるであろう会社の敷地内に侵入したため、殺人の準備行為には当たり、殺人予備罪が成立する可能性はあるでしょう。
殺人予備罪の他に、建造物侵入罪も成立するものと考えられます。
殺人予備罪は、法定刑が2年以下の懲役と、殺人罪や殺人未遂罪と比べると軽い刑罰となっています。
しかし、一歩間違えれば、実際に人を殺害してしまっていた可能性もありますので、決して軽い罪とは言えません。
刑事事件に強い弁護士に相談し、事案に応じた適切な対応を速やかにとるよう努めることが重要です。
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間接正犯で逮捕
間接正犯で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県高山警察署は、酒などの商品を11歳の子供に万引きするよう指示したとして、岐阜県高山市に住むAさんを窃盗容疑で逮捕しました。
子供はAさんに取って来るよう命令されたと言っていますが、Aさんは、「子供が勝手に盗んだだけ。自分は何もしてない。」と容疑を否認しています。
(フィクションです。)
間接正犯とは
犯罪が成立するには、ある行為が、構成要件に該当し、違法で有責であると言えなければなりません。
構成要件に該当するというのは、ある行為が法律により犯罪として決められた行為類型に該当するということを意味します。
殺人罪であれば、「人を殺した」行為であることが構成要件になります。
ある行為が構成要件に該当すると認められる場合には、行為者が実行行為を自ら行い、結果を直接惹起する場合の他に、実行行為を他人に行わせ、その他人によって結果が惹起される場合とがあります。
自ら実行行為を行い結果を惹起する場合を「直接正犯」といいます。
そして、他人の行為を利用して自己の犯罪を実現する正犯を「間接正犯」といいます。
間接正犯が認められるためには、他人の行為を「自己の犯罪の実現のための道具として利用した」と言えることが必要です。(最高裁決定平成9年10月30日)
今回は、刑事未成年者などの責任能力のない者を利用して窃盗を実行した場合での間接正犯の成立について説明します。
先述したように、間接正犯は、他人を「道具」として利用し、自己の犯罪を実現しようとする行為を対象とするものであるため、利用される者は「道具」として利用されたのでなければならず、たとえ刑事未成年者であっても、是非弁別能力のある者であれば、必ずしも利用者の思い通りに行動するとは限りませんので、「道具」として利用されたとは言えないこともあります。
判例においても、刑事未成年者を利用する場合であっても、それだけで直ちに間接正犯が認められるとしておらず、被利用者の意思が抑圧された状態で犯罪を実行した場合に間接正犯を認めるとしています。
12歳の養女に窃盗を命じてこれを行わせた事件において、被告人が日ごろ養女が逆らう素振りを見せる度に顔面にたばこの火を押し付けたりドライバーで顔をこすったりするなどの暴行を加えており、養女は被告人を怖がって被告人の命令に背くことができない状況を鑑みて、養女は12歳という年齢であり是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人が、意思が抑圧されている養女を利用して窃盗を行ったとして、被告人について窃盗の間接正犯が成立することを認めた判例があります。(最高裁決定昭和58年9月21日)
10歳の少年を利用して他人のバッグを盗ませたという事件において、被告人と少年の関係性や事実関係に照らして、少年が事理弁識能力が十分とはいえない年齢の刑事未成年者であることや、被告人から直ちに大きな危害が加えられるような状態ではなかったとしても、少年の年齢を考えると、日ごろから怖いという印象を抱いていた被告人からにらみつけられ、命令に逆らえない状況にあったとして、少年がある程度是非善悪の判断能力を有していたとしても、被告人には、自己の言動に畏怖し意思を抑圧されている10歳の少年を利用して自己の犯罪行為を行ったものとして、窃盗の間接正犯が成立することを認めた判決もあります。(大阪高裁判決平成7年11月9日)
このように、刑事未成年者を媒介として犯罪が行われた場合、是非弁別能力があっても、意思の抑圧などの事情が存在する場合には、間接正犯が成立すると考えられます。
上の事例では、Aさんは子供が勝手にやったことと主張していますが、Aさんと11歳の少女の関係性や事実関係によっては、Aさんに対して窃盗の間接正犯が成立する可能性があります。
間接正犯が成立するか否かは、事案にもよりますので、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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ストーカー規制法違反事件で示談締結
ストーカー規制法違反事件で示談を締結した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県北方警察署は、県内に住むAさんをストーカー規制法違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、元交際相手の女性Vさんに復縁を迫る電話やメールを執拗に送り、住居や職場で待ち伏せするなどしており、怖くなったVさんは岐阜県北方警察署に相談しました。
警察署は、Aさんに対し、Vさんに近づかないよう警告を行いましたが、Aさんはその後も同様の行為を繰り返していたため、Vさんは両親とともに再度警察に被害申告をしに行きました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Vさんに謝罪したいと警察に申出ましたが、「今のところ、Aさんの家族と連絡をとりたくない。」と断られました。
Aさんの家族は、今後どのように対処すべきか分からず、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
ストーカー規制法違反事件
Aさんは、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」といいます。)で禁止されている「ストーカー行為」を行ったとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。
ストーカー規制法で禁止される「ストーカー行為」というのは、「同一の者に対し、つきまとい等に掲げる行為を反復してすること」とされています。(ストーカー規制法第2条3項)
ここでいう「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」と規定されています。(ストーカー規制法第2条1項)
その「つきまとい等」の対象行為には、つきまといや待ち伏せ、拒まれたにもかかわらずしつこく電話やメールを送る行為が含まれます。
「つきまとい等」は、恋愛感情等を満たす目的で行われる必要があり、単なる嫌がらせ目的で行われた場合には、ストーカー規制法違反には当たりません。
同じ人に「つきまとい等」を繰り返して行えば、「ストーカー行為」となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。
通常、被害者が警察に相談し、被害者からの申し出がある場合で、相手方によるつきまとい等があり、かつ、今後も繰り返し行われる可能性があると認めるときには、警察は相手方に対してストーカー行為をやめるよう「警告」を行います。
また、公安委員会は、つきまとい等をして、相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為があり、かつ、更に反復してつきまとい等を行うおそれがあると認めるときには、更に反復してつきまとい等をしてはならないと命令することができます。
この禁止命令に反してストーカー行為をした場合には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科される可能性があります。
Aさんのように、いきなり逮捕されるのではなく、最初は警察からの警告にとどまることが多く、警告に反してつきまとい等を繰り返した場合にストーカー規制法違反で逮捕されることが多くなっています。
ストーカー規制法違反事件における示談の効果
ストーカー規制法違反事件では、加害者のストーカー行為により身体的・精神的被害を被った相手方(=被害者)が存在します。
被害者のいる事件において示談が成立しているかどうかは、検察官による終局処分や量刑に大きく影響し得る事情のひとつとなります。
被疑者を起訴するか否かを判断するのは、検察官です。
検察官は、捜査の結果に基づいて、その事件を起訴するか否かを決めます。
検察官は、被疑者が罪を犯したとの疑いがない、若しくは疑いが十分ではないと判断するときは、起訴しない決定(不起訴処分)をします。
また、被疑者が罪を犯したとの疑いが十分であっても、起訴しない場合があります。
それは、犯人の性格、年齢や境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の情況などの諸事情を考慮して、起訴する必要がないと考える場合(起訴猶予)です。
被害者との示談成立は、犯罪後の情況として考慮されます。
ストーカー規制法違反(ストーカー行為)は、2016年の改正前は、親告罪でしたが、改正後は非親告罪となりました。
そのため、検察官は、被害者の告訴がなくても事件を起訴することができます。
しかし、被害者との間で示談が成立している場合には、あえて起訴することはせず、不起訴で事件を終了させます。
そのため、ストーカー規制法違反事件において、事件を穏便に解決するためには被害者との示談交渉が重要となります。
しかしながら、加害者側が直接被害者と交渉することはあまり推奨されません。
というのも、被害者が加害者に対して嫌悪感や恐怖心を抱いているため、直接加害者やその家族と連絡することを拒む傾向にあるからです。
また、加害者側が直接被害者に連絡をとることによって、加害者が被害者に自分に有利なように働きかけている、と捜査機関に判断されてしまう可能性は大いにあります。
そのような事情からも、示談交渉は弁護士を介して行うのが一般的となっています。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもいいとおっしゃる被害者も多く、当人同士にありがちな、やったやっていないの水掛け論になることもなく冷静な話し合いをもつことができます。
また、合意内容をきちんと書面にし、後から争いが蒸し返すことのないようにすることも重要です。
ストーカー規制法違反事件で加害者となり、被害者への対応にお困りの方は、今すぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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器物損壊で不起訴
器物損壊で不起訴獲得に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県可児市にある民家の敷地内に止めてあった車の車体を石を使って複数回傷を付けたとして、岐阜県可児警察署は、市内に住むAさんを器物損壊の疑いで逮捕しました。
Aさんが車体の側面と後方に石のような物で引っかいた後、立ち去り際に石を捨てる様子が被害者宅の防犯カメラに映っていました。
被害者は、以前から何度か車を傷付けられることがあったため、防犯カメラを設置し犯人の様子をとらえようとしていました。
被害者は、岐阜県可児警察署に被害届を提出しており、執拗な嫌がらせ行為に対して憤りを感じています。
Aさんは、自身の行為を猛省しており、被害者に対して謝罪と被害弁償をしたいと考えています。
(フィクションです)
器物損壊罪
器物損壊罪は、刑法の261条で次のように規定されています。
前3条〔258条・259条・260条〕に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
◇客体◇
器物損壊罪の客体は、「前3条に規定するもののほか、他人の物」です。
つまり、公用文書等毀棄罪、私用文書等毀棄罪、建造物等損壊罪の客体以外のすべての物です。
動産だけでなく、不動産も含まれます。
また、動物も本罪の客体です。
◇行為◇
器物損壊罪の行為は、他人の物を「損壊・傷害」することです。
「損壊」というのは、物質的に物の全部、一部を害し又は物の本来の効用を失わせる行為を意味し、物理的な破壊に限りません。
例えば、他人の飲食器に放尿する行為は、当該飲食器自体を破壊して使用できなくしているわけではありませんが、通常人は放尿された飲食器を使用したいとは思わないので、行為後に飲食器として使用することができないため、飲食器の物の効用を害したと言え、当該行為が「損壊」に当たると理解されます。
「傷害」とは、動物に対する損壊のことで、動物を殺傷したり、逃がしたりすることです。
◇故意◇
器物損壊罪は故意犯ですので、不注意で(過失により)傷付けてしまった場合には本罪は成立しません。
しかし、客体が他人の所有に属するものであること、そして当該行為により客体を物理的に毀損し又は客体の効用を害することを認識していた場合には、故意が認められ器物損壊罪は成立します。
器物損壊事件で不起訴獲得に向けた活動
器物損壊事件において、容疑を認めている場合、不起訴となるためには、何よりもまず被害者との間で示談を成立させることが重要です。
なぜならば、器物損壊罪は親告罪といって、被害者などの告訴権者による告訴がなければ検察官は公訴を提起することができない罪であるからです。
告訴というのは、被害者などの告訴権を持つ者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めることをいいます。
つまり、器物損壊事件においては、示談成立に加えて告訴取消し(若しくは告訴しない約束)までしてもらえば、確実に不起訴で事件を終了することができます。
そのため、器物損壊事件で不起訴を目指す際には被害者との示談交渉が必要不可欠なのですが、示談交渉を当事者間で行うことはあまりお勧めできません。
当事者同士では、感情的になり交渉が難航する傾向があり、当事者間で示談をまとめることは容易ではないからです。
また、そもそも被害者の連絡先を被疑者本人やその関係者が入手することは簡単ではなく、被害者が直接被疑者に連絡先を教えたがらないケースは少なくありません。
その点、弁護士であれば、弁護士限りでの話し合いという形で捜査機関を通じて被害者に示談交渉を申し入れますので、交渉に応じてくれる被害者も多く、示談交渉も冷静に行うことができます。
弁護士は、示談が成立した場合には、成立の証拠となる示談書等を作成し、後に検察官に提出します。
執拗な嫌がらせを受けた被害者は、加害者に嫌悪感や恐怖感を抱いていることが多く、加害者と直接連絡をとりたがらないことや、連絡をとっても当事者間で感情的になり交渉がなかなかうまくすすまないことが少なくありません。
また、加害者本人も自ら被害者と話合うことに躊躇い、弁護士を介して交渉を行うことにメリットを感じられる方も多くいらっしゃいます。
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盗撮の在宅事件
盗撮の在宅事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県大垣市に住む大学生のAくん(20歳)は、市内の商業施設内で女子高生のスカート内に所持していたスマートフォンを差し入れ盗撮したとして、目撃者によって身柄を確保されました。
その後、通報を受けて駆け付けた岐阜県大垣警察署の警察官に警察署に連れていかれ、取調べを受けました。
その日の夜にAさんは釈放されましたが、Aさんは今後どのように対応すればよいのか分からず不安です。
翌日、AさんとAさんの両親は、刑事事件専門弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
在宅事件というのは、身柄が拘束されずに捜査が進められる事件のことです。
盗撮事件では、初犯であり、常習の疑いがなく、被害者と面識もなく、家族などの監督が期待できる場合には、逮捕されたとしても、逮捕から48時間以内に釈放となるケースは少なくありません。
釈放されたことで安心し、事件が解決したものと誤解される方もいらっしゃいますが、事件自体は釈放後も捜査が続きますので、警察や検察からの呼び出しに応じる必要があります。
事件の流れとしては、事件発覚後に捜査機関による捜査が開始され、被疑者は取調べを受けることになります。
捜査段階における最終的な処分は、警察ではなく検察官が決定します。
つまり、事件についての捜査を遂げると、検察官は起訴するか否かを決めるのです。
検察官が起訴し有罪となれば、法定刑の範囲内で刑が科されることになります。
その際、刑の執行を一定期間猶予し、その期間何事もなければ刑罰権の消滅を認める執行猶予という制度もありますので、有罪判決=実刑判決とは限りません。
一方、検察官が起訴しないとする決定(不起訴処分)をした場合には、その決定をもって事件が終了することになります。
この場合、有罪とはなりませんので、前科が付くことはありません。
不起訴処分にはその理由によって種類がありますが、容疑を認めている場合には、起訴猶予となるよう、被害者対応をはじめとして様々な活動を行う必要があります。
起訴猶予というのは、被疑事実が明白な場合において、犯罪を立証するだけの十分な証拠はあるものの、被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況を考慮し、訴追を必要としない場合の不起訴処分のことです。
被疑者の改悛や被害者との示談成立・宥恕獲得は、犯罪後の情況として起訴・不起訴の判断において考慮されます。
被害者との示談交渉
先にも述べたように、検察官が起訴・不起訴の判断をする際に、被害者との示談が成立しているか否かという点が犯罪後の情況として考慮されます。
被害者との示談が成立しているからといって、親告罪は別として、検察官は必ず不起訴にしなければならないというわけではありません。
しかし、被害者からの許しが得られているにもかかわらず、あえて起訴するという場合は、比較的重大な犯罪に当たる場合や犯罪態様が悪質である場合などであり、盗撮事件では、同種の前科前歴がある場合や常習性が認められる場合などが考えられますが、基本的には盗撮事件で被害者との間で示談が成立している場合には不起訴となることが多いです。
そのため、盗撮事件における最も重要な弁護活動のひとつが被害者との示談交渉となります。
示談交渉は、通常、弁護士を介して行います。
罪証隠滅を防ぐため、捜査機関は被疑者やその家族に対して被害者の連絡先を直接教えることは稀です。
また、被害者は被疑者に対して恐怖心や嫌悪感を抱いていることが多く、被疑者に自身の連絡先を教えたがらない傾向があり、被疑者やその家族が直接被害者と連絡をとることは容易ではありません。
他方、弁護士限りということであれば、捜査機関を通して被害者の連絡先を入手できる場合も多く、弁護士を介した交渉は、感情論的にならず冷静な話し合いを持つことができます。
また、弁護士は、できる限り両当事者が納得のいく内容となるよう交渉を行い、合意内容を証明する示談書を作成します。
示談書は、示談金額、告訴・被害届の取下げ、民事上の損害賠償に関する事項、被疑者・被告人の誓約事項などについて定めており、後日当事者間での争いが生じることのないようきちんとつめた内容にする必要があるため、示談書の作成は、法律の専門家である弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
盗撮事件を起こし対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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少年事件の身体拘束
少年事件における身体拘束について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県関市の公園で、遊びに来ていた女子児童に対してわいせつな行為をしたとして、岐阜県関警察署は、市内に住む中学生のAくん(14歳)を強制わいせつの容疑で逮捕しました。
Aくんの両親は、警察官にAくんとの面会を要望しましたが、「すぐに会うことはできない。」と言われ困っています。
今後、Aくんの身体拘束がどのくらい続くのか不安でならないAくんの両親は、ネットで少年事件に詳しい弁護士を探し、相談の電話をしました。
(フィクションです)
少年事件での身体拘束
20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が事件を起こした場合にも、逮捕や勾留といった身体拘束を強いられることはあるのでしょうか。
少年であっても、要件を満たしていれば身柄が拘束されることがあります。
以下、捜査段階と家庭裁判所送致後との2段階に分けて、少年の身柄が拘束される場合について説明します。
1.捜査段階
捜査段階での被疑者の身柄を確保するための強制処分は、「逮捕」および「勾留」です。
「逮捕」というのは、被疑者の身柄を拘束し、引き続き短時間その拘束を続ける処分のことです。
逮捕には、「通常逮捕」、「緊急逮捕」、そして「現行犯逮捕」とがあります。
上の事例でなされた「通常逮捕」とは、裁判官からあらかじめ逮捕状の発布を受けて行われるものです。
通常逮捕が認められるには、「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」がなければなりません。
「逮捕の理由」とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があることです。
「逮捕の必要性」とは、被疑者の逃亡や罪証隠滅のおそれがあることで、逮捕状の請求を受けた裁判官が逮捕の必要性について判断します。
以上の要件を満たすと裁判官が判断した場合には、逮捕状が発布され、警察は逮捕状に基づいて被疑者を逮捕します。
次に、捜査段階での身体拘束を伴う強制処分である「勾留」について説明します。
「勾留」とは、逮捕後引き続き比較的長期間の身体拘束の必要があるときに被疑者の身柄を拘束するものです。
警察は、被疑者を逮捕したときから48時間以内に、書類や証拠物とともに被疑者を検察官に送致しなければならず、検察官に送致しない場合には、被疑者を釈放しなければなりません。
警察から事件の送致を受けた場合、検察官は24時間以内に、公訴を提起するか、裁判官に勾留請求しなければならず、そうでなければ被疑者の身柄を解放しなければなりません。
検察官が勾留を請求すると、裁判官は被疑者と面談をし、検察官から送られてきた記録を検討した上で、勾留の要件を満たしているか否かを判断します。
裁判官は、まず「勾留の理由」があるか否かを検討します。
「勾留の理由」とは、①被疑者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」がある場合で、かつ、②住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ、いづれか少なくとも1つに該当することです。
裁判官は、「勾留の理由」があると判断する場合であっても、被疑者を勾留することによる利益とそれによって被疑者が被る不利益を比較衡量し、勾留の必要性(相当性)があるか否かを判断します。
勾留となれば、検察官が勾留請求した日から原則10日間、延長が認められれば最大で20日間の身体拘束を強いられることになります。
少年の場合には、勾留に代えて「勾留に代わる観護措置」がとられることがあります。
「勾留に代わる観護措置」は、検察官の請求により、裁判官がとることができるものであり、収容場所は少年鑑別所で、収容期間も10日間であり、「勾留」のように延長は認められません。
ただ、捜査段階で「勾留に代わる観護措置」がとられていた少年が家庭裁判所に送致された場合には、自動的に「観護措置」がとられたものとして扱われ、基本的には引き続き少年鑑別所での収容が続くことになります。
2.家庭裁判所送致後
事件が捜査機関(警察または検察官)から家庭裁判所に送致された後、家庭裁判所はいつでも「観護措置」をとることができます。
「観護措置」というのは、家庭裁判所が調査や審判を行うために、少年の身柄を保全し、調査や鑑別などを行いながら少年を保護するための措置のことです。
通常、「観護措置」という場合、少年鑑別所に収容する観護措置のことを指します。
少年法には、「審判を行うため必要があるとき」に観護措置をとることができると書かれていますが、実務上では以下の要件が必要であるとされています。
①事件の係属
②審判条件の具備
③審判に付すべき事由についての嫌疑の存在
④審判を行う蓋然性
⑤観護措置の必要性
⑤観護措置の必要性については、観護措置の目的である、(a)審判・調査の出頭確保のための身柄拘束の必要性、(b)少年の保護、(c)少年鑑別所における心身鑑別の必要性に対応して諸要件が設けられています。
観護措置の期間は、最長で2週間とされていますが、特に継続の必要がある場合には1回に限り更新できるとされています。
実務上、少年鑑別所の鑑別結果が出るのに時間を要することから、基本的に期間は更新され、通常4週間とされています。
以上のように、少年であっても、身柄が拘束される可能性はあり、身体拘束の期間が1~2か月となる場合もあります。
そのような長期間の身体拘束となれば、その間学校や職場に行くことはできませんので、退学や解雇といった事態が生じる可能性もあります。
そのような事態は、少年の居場所を失わせることになり、かえって少年の更生に支障をきたすことにもなりかねません。
お子様が事件を起こし身柄を拘束されてお困りであれば、一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弊所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
準強制わいせつ事件で逮捕
準強制わいせつ事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県海津市の整体院で、施術と偽り客の女性にわいせつな行為をしたとして、岐阜県海津警察署は整体師のAさんを準強制わいせつの容疑で逮捕しました。
客の女性が、警察に「施術中にわいせつな行為をされた」と相談したことで事件が発覚しました。
この女性以外にもAさんによるわいせつ被害を警察に相談している客がおり、警察はさらに捜査を進める方針です。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、刑事事件に強い弁護士に事件について相談の電話を入れました。
(フィクションです)
準強制わいせつ罪
準強制わいせつ罪は、
①(a)人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ、または、
(b)心身を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて
②わいせつな行為をする
ことを内容とする犯罪です。
暴行または脅迫を手段として用い、わいせつな行為をする場合には、「強制わいせつ罪」が成立しますが、「準強制わいせつ罪」は、暴行・脅迫の手段を用いずに、被害者の抵抗困難な状態を利用して、わいせつな行為を行う場合を処罰するものです。
①(a)人の心身喪失・抗拒不能に乗じ
「心神喪失」とは、精神的または生理的な障害により、正常な判断ができない状態にあることをいいます。
例えば、睡眠や酩酊状態や、高度の精神病または精神遅滞により被害者が行為の意味を理解できない場合が「心神喪失」に当たります。
「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由で、物理的・心理的に抵抗することが不可能または著しく困難な状態にあることを意味します。
物理的に抵抗することができない場合というのは、例えば、手足を縛られている場合であり、心理的に抵抗不可能な場合とは、錯誤や畏怖状態に陥っている場合などです。
強制わいせつ罪における心神喪失・抗拒不能は、どの程度のものである必要があるのかという点については、完全に不可能であることまでは必要とされず、犯行が著しく困難であれば足りるとされています。
心神喪失・抗拒不能に「乗じて」とは、犯人の行為と関係なく存在する抵抗不能な状態を利用する場合のことです。
②(b)心身を喪失させ、抗拒不能にさせて
犯人が、暴行・脅迫以外の手段を用いて、被害者の抵抗不能な状態を惹起する場合を指します。
例えば、被害者に睡眠薬を飲ませて、眠り込ませたところをわいせつな行為に及ぶ場合です。
準強制わいせつ罪の成立には、故意がなければなりません。
準強制わいせつ罪における故意として、犯人において、被害者が心神喪失・抗拒不能の状態であることを認識する必要があります。
準強制わいせつで逮捕されたら
準強制わいせつ事件で逮捕された場合、その後勾留となる可能性があります。
「勾留」というのは、被疑者・被告人を拘禁する裁判およびその執行のことをいいます。
検察官からの請求を受けて、裁判官が勾留について判断します。
起訴前の勾留を「被疑者勾留」、起訴後の勾留を「被告人勾留」と呼びます。
今回は、被疑者勾留について説明します。
裁判官は、勾留の要件を満たしているかどうかを検討し、勾留の有無を決定します。
勾留の要件には、①勾留の理由、そして、②勾留の必要性の2つがあります。
①勾留の理由
勾留の理由とは、被疑者・被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、かつ、(1)定まった住居を有しない、(2)罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある、または、(3)逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき、いずれかに該当することです。
被害者との関係如何では、釈放すれば被害者と接触し供述を変えるよう迫る可能背があると、(2)に該当すると判断されることがあります。
②勾留の必要性
勾留の必要性とは、勾留の相当性とも言われるもので、勾留の理由がある場合であっても、被疑者を勾留することによって得られる利益と、勾留により被る被疑者の不利益とを比較衡量し、それでも被疑者を勾留する必要があることです。
これらの要件を満たすと判断されれば、勾留の決定がなされ、検察官が勾留請求した日から原則10日間、延長となれば最大で20日間の身体拘束を余儀なくされるのです。
身体拘束が長期化すればするほど、その期間職場や学校に行くことができなくなりますので、事件が周囲に発覚し、最悪の場合には懲戒解雇や退学となる可能性もあります。
そのような事態を回避するためにも、早期に弁護士に相談し、身柄解放活動に取り掛かるのがよいでしょう。
そして、準強制わいせつ事件では、被害者に対する対応も、最終的な処分や身柄解放にも大きく影響することになります。
被害者との間で示談が成立している場合には、不起訴で事件が終了したり、起訴された場合であっても被告人に有利な事情として考慮され執行猶予となる可能性を高めることができるでしょう。
そのため、示談交渉を含めた被害者への対応についても、早い段階から行うことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が準強制わいせつ事件で逮捕されて対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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他人のカード情報を盗みネットで買い物
他人のカード情報を盗みネットで買い物した場合に問われ得る罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
衣料品店で販売のアルバイトをしていたAさん(18歳)が、岐阜県北警察署に電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されました。
Aさんは、アルバイト先で客が使用したクレジットカードの情報を売上票から入手し、ネットで新幹線のチケットやホテルの宿泊代を支払う際に入手したクレジットカードの情報を使用していました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
電子計算機使用詐欺罪とは
他人のクレジットカードの情報を不正に入手し、その情報を使ってオンラインショップなどで商品を購入した場合、パソコンに入力したクレジットカード情報の持ち主になりすまして商品を購入しているので、騙して物を入手したと言えます。
一見すると、刑法246条の詐欺罪に当たるように思われますが、詐欺罪の対象となるのは「人」を欺く行為であるため、コンピュータに対する詐欺的行為を行った場合、詐欺罪には当たりません。
しかし、刑法246条の2が昭和62年に新設され、コンピュータに対する詐欺的行為の処罰が可能となりました。
第246条の2 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。
◇客体◇
電子計算機使用詐欺罪の客体は、「財産上の利益」です。
「財産上の利益」とは、財物以外の財産上の利益の一切をいいます。
債権や担保権の取得、労役・サービスを提供させること等の他、債務免除や支払猶予を得ること等を含みます。
上の事例では、新幹線やホテルの利用権が財産上の利益となります。
◇行為◇
電子計算機使用詐欺罪の行為は、以下の2つです。
①「虚偽の情報若しくは不正の指令」による「不実の電磁的記録」の作出
246条の2前段は、「人が事務処理に使用する電子計算機」に「虚偽の情報若しくは不正の指令を与えて」、「不実の電磁的記録」を作る行為について規定しています。
(a)「人の事務処理に使用する電子計算機」
他人がその事務を処理するために使用する電子計算機(=コンピュータ)のことです。
(b)「虚偽」
電子計算機を使用する当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反するものを意味します。
(c)「虚偽の情報を与える」
「虚偽の情報若しくは不正な指令を与え」るというのは、当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報を入力させることをいいます。
(d)「不正な指令を与える」
「不正な指令を与え」るとは、その電子計算機の使用過程において本来与えられるべきでない指令を与えることをいいます。
(e)「財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録」
財産権の得喪・変更があったという事実や財産権の得喪・変更を生じさせるべき事実を記録した電磁的記録のことで、取引の場においてそれが作出されることによって、その財産権の得喪・変更が行われるものを指します。
(f)「不実の電磁的記録を作る」
「不実の電磁的記録を作」るとは、人の事務処理の用に供されている電磁的記録に虚偽のデータを入力して真実に反する内容の電磁的記録を作出することをいいます。
判例は、不正に入手したクレジットカードの名義人氏名等を冒用して、これらをクレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力送信して電子マネーの利用権を取得した行為について、「被告人は、本件クレジットカードの名義人による電子マネーの購入の申し込みがないにもかかわらず、本件電子計算機に同カードに係る番号等を入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え、名義人本人がこれを購入したとする財産権の得喪に係る不実の電磁的記録を作り、電子マネーの利用権を取得して財産上不法の利益を得たものというべきである」として、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めました。(最決平18・2・14)
②「虚偽の電磁的記録」の供用
246条の2後段は、「虚偽の電磁的記録」を供用する行為を規定しています。
(a)「供用」
「虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供」するとは、行為者が所持する内容虚偽である電磁的記録を、他人の事務処理用の電子計算機に差し入れて使用することをいいます。
上記事例の場合、Aさんは客が使用したクレジットカードの情報を入手しています。
Aさんは、オンラインショップなどで新幹線のチケットやホテルの予約をする際、不正に入手したクレジットカードの名義人であるかのように装い、そのクレジットカードの情報を入力し、新幹線のチケットやホテル代金をクレジットカードの名義人が支払ったかのような不実の電磁的記録を作り出し、Aさんは新幹線やホテルの利用権を取得しているため、電子計算機使用詐欺罪が成立するものと考えられます。
電子計算機使用詐欺罪は、法定刑が10年以下の懲役となっており、刑法犯の中でも重い罪となります。
被疑者が少年の場合、犯した罪の軽重のみが最終的な処分に影響を及ぼすのではなく、少年の要保護性、つまり、少年の資質や環境等に照らして、当該少年が再び非行をする危険性があるかという点も大きく影響します。
ですので、お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、すぐに少年事件に強い弁護士にご相談だくさい。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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強制わいせつ事件で執行猶予
強制わいせつ事件での執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
昨年の夏、夜中に岐阜県中津川市を歩いていた女性を背後から襲い、無理やり女性の服の中に手を入れ胸を鷲掴みにするという事件が起こりました。
岐阜県中津川警察署は、被害女性からの申告を受け、強制わいせつ事件として捜査を開始しました。
その後、同警察署は、市内に住むAさんを強制わいせつ事件の被疑者として逮捕しました。
警察署は、Aさんが他にも同様の手口で女性に暴行を加えた疑いがあるとみています。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに弁護士に接見を依頼しました。
弁護士から被疑事実を聞いたAさんの両親は、ショックを隠せませんが、Aさんが刑務所に入ることになるのか心配でなりません。
(フィクションです)
執行猶予について
検察官が、裁判所に対して、特定の犯罪事実について特定の被告人に対する実体的審理及び有罪の判決を求める意思表示(「公判請求」といいます。)をすると、裁判所は、被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことが間違いがないと判断できるかどうかを、裁判所に提出された証拠に基づいて審理します。
裁判官は、有罪あるいは無罪のどちらかを選択します。
裁判官が、「被告人が起訴状にある罪を犯したかもしれないが、そうじゃないかもしれない。」と、白とも黒とも言い切れない場合には、無罪を言い渡します。
他方、証拠から、被告人が起訴状記載の罪を犯したことが、合理的な疑いを超えて証明されたと判断する場合には、裁判官は被告人を有罪とし、どのような刑にするかを決めます。
刑罰には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収があります。
上の事例において、Aさんが問われている強制わいせつ罪の法定刑は、「6月以上10年以下の懲役」となっており、強制わいせつ罪で有罪となれば、この範囲内(6月~10年)の懲役刑が科されることになります。
ただし、強制わいせつ罪で有罪判決を受けた全ての場合について、実際に刑務所に入るわけではありません。
刑の言い渡しを受けた場合であっても、刑を言い渡すにあたって、犯情により一定期間その執行を猶予し、猶予期間を無事に経過したときは、刑罰権の消滅を認める制度があります。
これを「刑の執行猶予」といい、刑の全部の執行猶予と刑の一部執行猶予とがあります。
ここでは、刑の全部の執行猶予について解説します。
刑の全部の執行猶予は、すべての有罪判決に付くわけではありません。
次の要件を充たす場合のみ適用することができます。
刑法25条1項は、
①前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者、あるいは、②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終えた日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者、であって、
3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しを受けたとき、
情状により、
裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間で、
その刑の全部を猶予することができる。
と規定しています。
つまり、裁判官が、執行猶予とするには、
①(a)これまでに禁錮以上の刑に処せられたことがないこと、または、
(b)これまで禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しをする場合であること。
③執行猶予を相当とするにたりる情状があること。
を充たしている場合に限られます。
これらは、初度の場合であり、再度の場合については、
①前に禁錮以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役・禁錮の言い渡しをする場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
が要件となります。
再度の場合は、初度の場合に比べ、厳しい要件が設けられています。
上の事例について考えてみたとき、仮にAさんが初犯であったのであれば、刑の全部の執行猶予(初度の場合)の1つ目の要件を充たしていることになります。
また、強制わいせつ罪で有罪となった場合には、裁判官は、6月以上10年以下の範囲での懲役刑を科すことになりますので、6月~3年の範囲で懲役刑を言い渡すことも可能ですので、上の2つ目の要件も充たす可能性はあります。
最後の「執行猶予を相当とするにたりる情状」ですが、強制わいせつ事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが大きなポイントとなるでしょう。
その他、家族の監督や専門的治療を受けるなど再犯防止策がしっかりと講じられている等も、被告人に有利な事情として考慮されるでしょう。
このように、執行猶予を獲得するためには、被害者との示談交渉をはじめ、早期に対応すべき事柄も多く、専門的知識や経験が必要となります。
そのため、これらの活動は、早い段階から刑事事件に精通する弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が強制わいせつで逮捕され対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。