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ひき逃げ事件の故意否認

2021-03-04

ひき逃げ事件の故意否認について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県可児警察署は、Aさんを過失運転致傷及び道路交通法違反(救護義務違反)の容疑で逮捕しました。
岐阜県可児郡御嵩町の路上で歩行者と接触し転倒させたにも関わらず、そのまま現場を立ち去ったとの疑いがAさんにかかっているとのことです。
Aさんは、事故を起こしたとの記憶がないため、ひき逃げについても全く覚えがありません。
Aさんは、どう対応したらいいのかと困っています。
(フィクションです。)

ひき逃げとは

いわゆる「ひき逃げ」というのは、交通事故を起こし、人に怪我を負わせたにもかかわらず、何もせずにそのまま現場から立ち去る行為のことです。
ひき逃げ行為は、道路交通法に定められている「救護義務」及び「報告義務」に違反します。

1.救護義務(道路交通法72条1項前段)

交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。

交通事故を起こした場合には、負傷者を救護し、被害拡大を防止する措置をとらなければならないことを定めています。

「交通事故」とは、車両等の交通による人の死傷もしくは物の損壊のことを指します。
この「交通事故」が発生した場合には、上のような措置をとる義務が運転者らに課せられるのですが、その義務が発生するには、そもそも「交通事故」が発生していなければなりません。
義務を運転者らに負わせるためには、運転者らが、その車両等の交通によって人を死傷させた、あるいは物を損壊したことについて認識していることが必要となります。
なぜならば、救護義務違反は、「ついうっかり」という「過失」犯ではなく、「わざと」である「故意」犯であるからです。

ここで問題となるのが、その認識の程度です。
これについては、①人又は物件に接触し、若しくはこれを転倒せしめたことのみについての認識で足りるとする見解、と、②人の死傷又は物件の損壊を生ぜしめたことの認識まで必要とするとの見解があります。
2つの見解のうち、②が有力とされており、救護義務違反の罪は故意犯であり、人の死傷又は物件の損壊という点について認識が必要とされるが、その認識は、必ずしも確定的なものである必要まではなく、未必的で足りるとするのが判例となっています。

例えば、進路付近に人か動物かよくわからないけれども何か動く物があることを発見しつつ、その直後に異様なショックを感知したような場合に、人の死傷か物件の損壊のいずれかについての事故の確定的認識はなかったとしても、未必的認識があったと認めたもの(最高裁、昭和47年3月28日)や、車両が他人の車両や物件に接触または衝突したときは、相手方の運転者等が怪我を負っていることまでの認識がなかったとしても、接触・衝突の認識があれば、少なくとも相手方の車両や物件の損壊については未必的にも認識があったと認められ、義務違反を認めたもの(東京高裁、昭和30年1月28日)があります。

認識の程度についての判断は、個々の交通事故について具体的状況に基づいて行われますが、一般的には、交通事故当時の運転者等の身体的・心理的状況、現場の状況、事故発生時の衝撃・音響・叫び声の有無、車両の損壊、事故の態様など客観的事情を総合的に考慮して判断されることになります。
このような客観的事情から、Aさんが接触事故を起こしたこと自体を認識していたとは認められない場合には、救護義務違反は成立しないことになります。

2.報告義務(道路交通法72条1項後段)

この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

交通事故が発生した場合には、事故関係者は事故現場の状況を警察官に報告しなければなりません。
この義務違反についても、救護義務違反と同様に故意犯であるため、そもそも交通事故の認識がなければ成立しません。

Aさんのように歩行者と接触したこと自体気付いていなかった場合には、故意はなくひき逃げには当たらない旨を主張することになります。
取調べでは、自己に不利な供述がとられないよう、早期に弁護士に相談し取調べ対応についてのアドバイスをもらうようにしましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
ひき逃げを疑われており対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

少年の恐喝事件

2021-03-01

少年恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県加茂警察署は、知人のVくんに暴行を加えて現金1万円と財布などを脅し取ったとして、Aくん(16歳)とBくん(15歳)を恐喝の疑いで逮捕しました。
二人は容疑を認めているとのことですが、逮捕の連絡を受けたAくんの母親は、今後どうなるのか不安で仕方ありません。
Aくんの母親は、すぐに対応してくれる弁護士を探すことにしました。
(フィクションです。)

まずは、恐喝罪とはどのような罪であるのかについて説明します。

恐喝罪

恐喝罪は、
①人を恐喝して、財物を交付させる
②人を恐喝して、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させる
罪です。

◇客体◇

恐喝罪の客体は、他人の占有する他人の財物と財産上の利益です。

◇行為◇

恐喝罪の行為は、
(a)人を恐喝して財物を交付させること
(b)人を恐喝して財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させること
です。

恐喝」というのは、脅迫または暴行を手段として、その反抗を抑圧するにたりない程度に相手方を畏怖させ、財物の交付または財産上不法の利益を得させるよう要求することです。
ここでいう「脅迫」とは、人を畏怖させるにたりる害悪の告知をいいます。
また、「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使のことです。
恐喝罪に求められる暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧する程度に達していないレベルのものであり、相手方の反抗を抑圧する程度に達する場合には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立することになります。

恐喝罪の成立には、恐喝行為の結果、畏怖した相手方の処分行為に基づいて財物を交付し、財物の占有を取得したという、恐喝行為と財物の交付との間には因果関係が必要となります。
不法利益取得の場合も、恐喝行為により相手方を畏怖させて利益を移転させたという因果関係が必要です。

恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役となっており、罰金刑はなく刑法犯のなかでも重い罪となっています。

少年の恐喝事件

少年による恐喝事件の多くは、同級生や後輩を脅して金銭を要求するといったいじめから発展したようなケースが多く見受けられます。
また、犯行を一人で行うことはほとんどなく、仲間と共謀して行うことが多く、そのような場合には共犯事件として扱われます。

複数人と共謀して恐喝したのであれば、共犯者ともども逮捕・勾留される可能性は非常に高いでしょう。
少年と言えども、他の仲間と口裏合わせをして責任逃れをしたり、被害者と接触して供述を変えるよう脅したりするおそれがあると考えられ、少年の身柄を拘束して捜査を進める必要があると判断されるからです。
捜査段階での逮捕・勾留、家庭裁判所送致後の観護措置により、少年が長期間身体拘束を余儀なくされる可能性はあります。
しかしながら、事件の内容や事件後の対応によっては、勾留や観護措置を回避することができる場合もありますので、逮捕のおそれがある場合や逮捕された場合には、早期に弁護士に相談するのがよいでしょう。

家庭裁判所に送致された後、審判で最終的な処分が決定することになります。
処分には、保護観察処分や少年院送致などさまざまな種類があります。
どのような処分が少年の更生に適したものであると判断されるかによりますが、非行事実の内容や要保護性の程度に基づいて行われます。
要保護性というのは、簡単に言うと、少年が将来再び非行に陥る危険性があり、保護処分により再非行を防止することが可能であることです。
恐喝事件は決して軽微な犯罪ではありませんが、その後に少年が反省し、被害者にも謝罪や被害弁償などを行うなかで事件と向き合うことができ、再び過ちを犯さないように家庭や交際関係など周囲の環境を整備している場合には、審判で要保護性が解消されたと判断される可能性があり、処分についても社会内処遇となることが期待できるでしょう。

少年事件は成人の刑事事件と異なる点も多いため、少年事件でお困りであれば、少年事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
少年事件を数多く取り扱ってきた経験豊富な弁護士が対応いたします。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

少年審判に向けた付添人活動

2021-02-25

少年審判に向けた付添人活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県岐阜市を走る電車内で、女子高生に対して痴漢をしたとして、市内に住む高校生のAくんが迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
岐阜県岐阜羽島警察署は、取調べ後にAくんを釈放しましたが、警察からは「後日、家庭裁判所に送られるので、少年審判を受けることになる。」と言われました。
少年審判と聞いて不安になったAくんとAくんの両親は、少年事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

少年審判について

捜査機関は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合でも家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
これを「全件送致主義」といい、少年保護の専門機関である家庭裁判所に、少年に対してどのような処遇が適当かという判断を委ねるものであって、教育による少年の改善更生を目指すことを目的とするためと言われています。

事件が家庭裁判所に送致されると、少年は、家庭裁判所調査官による調査を受けた上で、審判期日での審理を行い、終局決定が言い渡されることになります。

少年事件は、成人の刑事事件のように公開法廷での公判が開かれることはなく、非公開の審判にて審理が行われます。
また、少年審判では、裁判官は、家庭裁判所送致の際に捜査機関から送付されてきた記録を検討し、調査官の調査等を踏まえた上で審判に臨むことになります。
そのため、審判までに裁判官は一定の心証を形成しており、審判期日で初めて付添人が意見を述べるのでは時すでに遅し、ということになります。

そのため、審判までに、書面を提出したり、調査官や裁判官と協議を行うなど、付添人の意見を家庭裁判所に事前にしっかりと伝えておかなければなりません。
裁判所では把握していない少年についての事情などもありますので、少年の更生に資する情報は積極的に裁判所に伝えておく必要があるでしょう。

少年審判に向けた付添人活動

審判では、非行事実及び要保護性について審理されます。

1.非行事実

非行事実は、成人の刑事事件でいうところの「公訴事実」です。
非行事実を争う場合には、少年の言い分を確認しつつ、証拠を十分に検討して、どのような主張立証活動を行うのか吟味しなければなりません。
非行事実に争いがない事件では、通常1回の審判で決定の告知まで行われるのに対して、審判期日に先立って進行協議や打ち合わせといった期日が設けられたり、証拠調べのための期日を複数回設けたりと期日が複数回にもなります。

2.要保護性

要保護性とは、次の3つの要素から構成されるものと考えられています。
①犯罪的危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性。
③保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。
これらの要素を考慮して、要保護性について判断されます。

犯罪の軽重が量刑に直結する成人の刑事事件とは異なり、少年事件では、行った行為が重い罪に当たる場合でも、要保護性が解消されたと判断されれば、保護観察処分といった社会内処遇が選択されることもあるのです。
そのため、要保護性の解消に向けた活動は、非常に重要な付添人活動と言えます。
そのような活動には、少年自身の内省を深めたり、家庭や学校といった少年の居場所となる周囲の環境を改善することが含まれます。

痴漢事件であれば、なぜ事件を起こしてしまったのか、被害者はどのような気持ちでいるのか、再犯を防止するためには何をすべきか、といった点を少年自身が考えることが非常に重要です。
付添人は、少年が事件、そして被害者と向き合い、内省を深め、自身が抱える問題に向き合い、対処法を見つけ出せるよう手助けをします。
一方的に押し付けるのではなく、あくまでも少年自身が考えることが重要だからです。
また、家庭環境や学校などに問題がある場合には、どのように改善すべきかも少年や家族、学校関係者らと共に考え、更生のために適した環境を整えられるよう支援することも重要な活動です。

このように少年審判に向けた付添人活動は、最終的な結果にも影響し得る重要なものです。
お子様が事件を起こしてしまい対応にお困りであれば、少年事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
少年事件でお困りの方は、今すぐお電話ください。

勾留延長阻止で釈放

2021-02-22

勾留延長阻止に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県養老郡養老町に住むAさんは、同棲する交際相手の女性に暴力を振るい怪我を負わせたとして、岐阜県養老警察署に傷害の疑いで逮捕されました。
Aさんは、逮捕後に勾留となり10日の身体拘束を余儀なくされています。
勾留延長を心配するAさんの両親は、早期釈放に向けて動いてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)

DV事案については、被害者との関係性から、被疑者を釈放すれば、被害者と接触し被害者に供述を変えるよう迫るなど罪証隠滅のおそれが認められ、逮捕後に勾留される可能性は高いと言えるでしょう。

そもそも「勾留」というのは、被疑者・被告人を刑事施設等にその身柄を拘束する裁判及びその執行のことをいいます。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者の身柄を検察官に送致します。
そうでない場合は、被疑者を釈放しなければなりません。
被疑者の身柄を受けた検察官は、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放する、あるいは裁判官に対して当該被疑者について勾留請求を行います。
検察官の請求を受けて、裁判官は被疑者を勾留すべきか否かを検討し、勾留しないと決定した場合には、当該被疑者は釈放されます。
勾留とした場合、被疑者は、検察官が勾留請求をした日から原則10日間刑事施設で身柄が拘束されることになります。
検察官が、10日間で終局処分を決定することができず、更に捜査する必要があると考える場合には、裁判官に対して勾留延長の請求を行います。
この請求を受けて、裁判官は勾留延長について判断します。
勾留延長についても最大で10日間とすることができるので、延長が認められれば、最初の勾留請求の日から最大で20日もの間身柄が拘束されることになります。

身体拘束中は、刑事施設において、厳しい規制の中で生活しなければなりません。
外部との接触が極端に制限された環境での取調べは、精神的にも大きな負担となります。
また、身体拘束が長期化すればするほど、仕事や学校を休まざるを得ず、解雇や退学といった可能性も高まります。
そのため、身体拘束は、本人だけでなく、その家族の生活にも影響します。
最悪の事態を回避するためにも、一日も早く身体拘束から解放されることは重要です。

早期釈放を実現するには、できれば勾留が決定する前の段階から身柄解放活動に着手し、勾留阻止することが望ましいでしょう。
また、勾留が決定した場合であっても、すぐに勾留に対する準抗告を行い、一日でも早く釈放されるよう働きかけることが重要です。
しかし、様々な理由から、弁護士に相談・依頼するのが遅くなり、相談・依頼したときには既に勾留日から日数が経過していることもあります。

そのような場合であっても、勾留延長阻止したり、勾留の取消しを行うなどの方法により、できる限り早期に釈放を目指しましょう。

DV事案では、勾留の判断の際に被害者との接触による罪証隠滅のおそれが認められることが多いため、弁護士は、被害者との示談を成立させることにより、勾留の理由または勾留の必要性がなくなったとして勾留取消請求を行ったり、被害者との示談が成立したことで最初の勾留期間内に終局処分をするよう検察官に要請し勾留延長阻止するといった活動を行います。

長期の身体拘束は、被疑者・被告人だけでなく、その家族の生活にも大きく影響するため、できるだけ早くに釈放となるよう迅速に動かなければなりません。
そのような活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
これまで数多くの刑事事件・少年事件で身柄解放活動を行い、早期釈放に成功してきた実績があります。
ご家族が刑事事件・少年事件で逮捕・勾留されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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薬物事件で一部執行猶予

2021-02-18

一部執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県岐阜市のAさんは、覚醒剤の使用で岐阜県岐阜北警察署に逮捕されました。
Aさんは、覚醒剤などの違法薬物を使用・所持の前科があります。
薬物から手を洗いたいと思うAさんですが、今回はさすがに実刑も覚悟しています。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、すぐに薬物事件に強い弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)

有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再度罪を犯すことなく経過した場合に刑罰権を消滅させる制度を「執行猶予」といいます。
この執行猶予には、「刑の全部執行猶予」と「刑の一部執行猶予」の2種類があります。

「刑の全部執行猶予」は、刑の全部の執行を猶予する執行猶予です。
例えば、裁判官に、「被告人を懲役3年に処する。その刑の全部の執行を5年間猶予する。」と言われた場合、被告人はすぐに刑務所に入ることはなく、5年間の間再び罪を犯すことがなければ、言い渡された懲役3年という刑罰の効力が失われることになります。

一部執行猶予について

刑の全部執行猶予とは異なり、服役期間の一部の執行を猶予するのが刑の一部執行猶予制度です。
この制度は、2016年6月から施行されています。
一部執行猶予は、「特別予防のための実刑のバリエーション」といわれており、受刑者の再犯防止や社会復帰のために効果的な制度として期待され導入されました。
一部執行猶予は、全部実刑と全部執行猶予の中間刑ではなく、あくまでの実刑の1種ですので、まずは実刑か全部執行猶予かが検討され、実刑の場合に一部執行猶予とするかが検討されることになります。

一部執行猶予は、刑法及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律に定められています。

1.刑法上の刑の一部執行猶予

刑法上の刑の一部執行猶予の対象となる者は、
・前に禁固以上の刑に処さられたことのない者
・前に禁固以上の刑に処さられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
・前に禁固以上の刑に処さられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者
です。

また、言い渡される刑が3年以下の懲役又は禁固であり、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再犯防止に必要かつ相当であることが認められる場合に、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができると定められています。(刑法第27条の2)

2.薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律上の一部執行猶予

この一部執行猶予が適用できるのは、覚醒剤や大麻などの違法薬物の使用や所持等となっています。
この制度が適用される要件は、
・刑法上の刑の一部執行猶予の対象となる者
・薬物使用等の罪を犯した者
・犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが再犯防止に必要かつ相当であることが認められる場合
とされます。
また、この場合には保護観察は必要的に付されることになります。

薬物事件で執行猶予が難しい場合には、一部執行猶予となるよう裁判に挑む場合もあります。

薬物事件においては、どのような環境が更生に適しているのかを考えることが大切です。
ご家族が薬物事件で被疑者・被告人となりお困りの方は、薬物事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

覚醒剤の所持で逮捕

2021-02-15

覚醒剤所持罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県瑞浪市に住むAさんは、突然岐阜県多治見警察署の家宅捜索を受けました。
すると、Aさんの自宅から覚醒剤が発見され、Aさんは覚醒剤所持逮捕されました。
Aさんは、「交際相手から預かったもので私は使用していません。」と述べています。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、娘の薬物事件での逮捕に非常に驚きましたが、詳細が分からず困っています。
(フィクションです。)

覚醒剤の所持罪

覚醒剤が法律で禁止されている違法薬物であることはよく知られています。
覚醒剤については、覚せい剤取締法について規制されており、覚醒剤及び覚醒剤の原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して厳しく取締っています。

覚醒剤事件のなかでも、覚醒剤所持で検挙されるケースが多いです。

覚せい剤取締法第41条の2は、
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3 前2項の未遂罪は、罰する。
と規定しており、「みだりに」「覚醒剤を」「所持する」ことを禁止しており、違反行為を処罰の対象としています。

「みだりに」というのは、社会通念上正当な理由が認められない、という意味で、日本国内の行為であれば、日本の法律に違反することを意味します。
所持」の意義については、判例は、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいうのであって、その実力支配関係の持続する限り所持は存続するものというべく、かかる関係の存否は、各場合における諸般の事情に従い社会通念によって決定されるものである」としています。(最高裁大法廷判決昭和30年12月21日)
この点、上記の事例について考えてみると、Aさんの自宅内に覚醒剤があったのであるから、Aさんは当該覚醒剤を自己の実力支配内に置いていたと言えるでしょう。
しかし、犯罪が成立するためには、「故意」がなければなりません。
故意とは、罪を犯す意思のことをいい、覚醒剤所持罪の場合では、「覚醒剤を自己の実力支配内に置くことを認識していること」です。
覚醒剤事件では、他人の覚醒剤所持した事案も少なくなく、その場合には、「他人が勝手に置いて行った。」とか、「その覚醒剤を自分で使うつもりはなかった。」と主張することが多いのですが、積極的に覚醒剤を保管する意思がなかった場合でも所持罪は成立するのか否かということが問題となります。
これについては、所持はあくまでも覚醒剤を自己の実力的支配内に置く行為であればよく、その態様の如何を問わないため、覚醒剤と知りながら自己の実力的支配内に置けば所持罪が成立するとされています。
そのため、Aさんは、「交際相手から預かったもので私は使用していません。」と言っていますが、Aさんが預かった物が覚醒剤であると知りつつ、それを自宅に置いていたのであれば、Aさんに対する覚醒剤所持罪が成立することになります。

覚醒剤所持罪の法定刑は、10年以下の懲役と重い罪となっています。
また、共犯が疑われるため、逮捕・勾留の身体拘束に加えて、接見禁止に付される可能性もあります。
そうなれば、弁護士以外の者との面会ができなくなってしまいます。

ご家族が覚醒剤事件で逮捕されてお困りであれば、薬物事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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傷害事件:不作為による幇助

2021-02-11

不作為による幇助について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
Aさんは、岐阜県不破郡垂井町のアパートに、内縁の夫Bさんと長女Vちゃん(2歳)と3人で暮らしていました。
Bさんは、Vちゃんが言うことを聞かない時に、しつけと称してVちゃんに対して殴るなどの暴行を加えていました。
Aさんは、Bさんの行為を知っていましたが特にそれを止めることはありませんでした。
ある日、岐阜県垂井警察署は、Vちゃんに暴行を加えて怪我を負わせたとして、Bさんを傷害の容疑で逮捕しました。
その後、Aさんも警察から取調べを受けることになりました。
(フィクションです。)

正犯と共犯

「正犯」とは、自ら各犯罪の基本的構成要件に該当する行為を行う者をいいます。
基本的構成要件というのは、法律に規定されている構成要件、つまり、どういう行為が犯罪にあたるかという犯罪の類型のことです。
例えば、傷害罪であれば、「他人の身体を傷害すること」です。
BさんがVちゃんに暴行を加えて怪我を負わせたのであれば、Bさんは自身でVちゃんの身体を傷害したと言え、BさんはVちゃんに対する傷害の正犯となります。

しかしながら現実には、1人で犯罪を実現する場合だけでなく、2人以上で協力して犯罪を実現する場合も少なくありません。
このように、2人以上の行為者が協力して犯罪を実現させる場合を「共犯」といいます。

共犯には、「共同正犯」、「教唆」、そして「幇助」の3つの類型があります。

共同正犯は、2人以上共同して犯罪を実行することを意味し、正犯として取り扱われます。

教唆は、人を教唆して犯罪を実行させることであり、正犯の刑を科すものとされています。

幇助とは

共犯の第3類型の「幇助」とは、「正犯を幇助」することであり、「従犯」として取り扱われ、正犯の刑を減軽した刑が科されることになります。
幇助」は、正犯に物理的・精神的な援助や支援を付与することで、その実行行為の遂行を促進し、構成要件該当事実の惹起を促進することを意味します。
つまり、手助けが正犯の犯罪実現に役立ったという場合でなければ幇助犯は成立しません。
また、幇助の意思がない場合にも幇助犯は成立しません。

不作為による幇助

不作為による幇助は、一般的に、犯罪を防止するべき作為義務がある者が、この義務に違反して犯罪の防止を行ったときに成立するとされています。
つまり、保障人に義務づけられる措置の不履行が認められ、その措置を行わないことによって犯行を容易にし、これら客観的要件を認識している場合に幇助犯が成立することになります。
この点、保障人に義務付けられる措置とは、どのようなものをいうかが問題となりますが、少なくとも正犯による犯罪の実現を防止することができるような行為、犯罪の実現を困難にすることが可能な行為を行うことが求められます。
そのため、Aさんは、自らVちゃんに手を出してはいないものの、Bさんの暴力からVちゃんを守るため、言葉による制止だけでなく、体を張って阻止することや、その場で犯罪の実現を阻止し得る行為を行わなければならない立場であったとされるでしょう。

このように、何もしないことが犯罪を手助けしたとして幇助犯が成立する場合もあります。
また、児童虐待事件においては、事案によっては幇助犯ではなく共同正犯(共謀共同正犯)となることもありますので、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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殺人:予備罪と未遂罪

2021-02-08

殺人予備罪未遂罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県不破郡関ケ原町の会社から、「会社の敷地内にナイフをもってわめいている男性がいる。」と110番通報がありました。
通報を受けて現場に駆け付けた岐阜県垂井警察署の警察官は、セキュリティがかかり閉まった玄関ドアの外でナイフを持っていた男性を発見し、銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕しました。
男性は、調べに対して「社長に恨みをもっており、殺そうと思って会社に行った。」と供述しています。
(フィクションです)

上の事例では、男性が会社の社長を殺す意思(殺意)に基づき、凶器であるナイフを手にして会社へ出向きました。
しかし、社長を殺すという目的は果たせていませんし、社長と会うことすらできていません。
このような場合には、銃刀法違反以外にも罪が成立する可能性はあるのでしょうか。

殺人未遂罪

犯罪の実行に着手して、これを遂げなかった場合を「未遂」といいます。
「実行の着手」とは、実行行為の一部を開始することをいいます。
未遂罪の成立には、「犯罪の実行に着手」することが必要となります。
この実行の着手の有無をどのような基準を基に判断するのかが問題となります。
実行の着手時期の判断基準について、様々な学説がありますが、法益侵害の現実的危険の発生を基準に実行の着手時期を決定する「実質的客観説」が通説となっています。
判例は、行為者の犯罪計画全体に照らし、法益侵害の危険が切迫した時点に実行の着手を求める見解に立っています。

殺人罪についての判例で、被告人らの殺害計画は、クロロホルムを吸引させて被害者を失神させた上、その失神状態を利用し、被害者を港まで運び車ごと海中に転落させて溺死させるというものであって、第1行為(クロロホルムを吸引させる行為)は第2行為(港まで運んで車を転落させる行為)を確実かつ容易におこなうために必要不可欠なものであったといえること、そして、第1行為に成功した場合、それ以降の殺害計画を遂行する上で障害となるような特段の事情が存在しなかったと認められること、第1行為と第2行為との間の時間的場所的近接性などに照らすと、第1行為は第2行為に密接な行為であり、被告人らが第1行為を開始した時点で既に殺人に至る客観的な危険性が明らかに認められるため、その時点において殺人罪の実行の着手があったものと解するのが相当だとしたものがあります。(最決平16・3・22)
つまり、最高裁は、クロロホルムの吸引行為が海中への転落行為に密接な行為であり、それ自体殺害に至る客観的な危険性があることから、クロロホルムの吸引行為を開始した時点で殺人の実行の着手があったものと認めています。

殺人予備罪

予備」とは、犯罪の実現を目的として行われる謀議以外の方法による準備行為をいいます。
予備罪は、特定の既遂犯を実現する目的でなされる準備行為を処罰するものです。

予備を処罰する規定には、殺人予備罪があります。

刑法201条 
第199条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。

殺人の実行を可能にし、または容易にする準備行為が「殺人予備罪」となります。
判例では、人を殺害する目的で包丁を携えて被害者宅に侵入し、被害者の姿を探し求めて屋内を通り歩いた行為、他人から殺人の用に供するための青酸カリの調達入手方の依頼を受け、これを入手してその他人に手交する行為、殺人を意図して被害者等の日常通行する農道の道端に毒入りジュースを置く行為は殺人予備罪に該当するとしています。

さて、上の事例について検討してみますと、Aさんは、会社社長を殺すつもりでナイフを持って会社の敷地内に侵入しています。
しかしながら、会社の玄関の外でAさんの身柄が確保されており、Aさんが会社社長に会うことすらなく、会社社長を殺害することができませんでした。
そのため、ナイフを持って会社の敷地内に侵入した時点では、社長の殺害に至る客観的な危険性があったとは言えず、実行行為の着手があったとは認められないでしょう。
殺人未遂罪は成立し難いでしょう。
一方、会社社長を殺す意思のもとナイフを所持して会社社長がいるであろう会社の敷地内に侵入したため、殺人の準備行為には当たり、殺人予備罪が成立する可能性はあるでしょう。
殺人予備罪の他に、建造物侵入罪も成立するものと考えられます。

殺人予備罪は、法定刑が2年以下の懲役と、殺人罪や殺人未遂罪と比べると軽い刑罰となっています。
しかし、一歩間違えれば、実際に人を殺害してしまっていた可能性もありますので、決して軽い罪とは言えません。
刑事事件に強い弁護士に相談し、事案に応じた適切な対応を速やかにとるよう努めることが重要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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間接正犯で逮捕

2021-02-04

間接正犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県高山警察署は、酒などの商品を11歳の子供に万引きするよう指示したとして、岐阜県高山市に住むAさんを窃盗容疑で逮捕しました。
子供はAさんに取って来るよう命令されたと言っていますが、Aさんは、「子供が勝手に盗んだだけ。自分は何もしてない。」と容疑を否認しています。
(フィクションです。)

間接正犯とは

犯罪が成立するには、ある行為が、構成要件に該当し、違法で有責であると言えなければなりません。
構成要件に該当するというのは、ある行為が法律により犯罪として決められた行為類型に該当するということを意味します。
殺人罪であれば、「人を殺した」行為であることが構成要件になります。
ある行為が構成要件に該当すると認められる場合には、行為者が実行行為を自ら行い、結果を直接惹起する場合の他に、実行行為を他人に行わせ、その他人によって結果が惹起される場合とがあります。
自ら実行行為を行い結果を惹起する場合を「直接正犯」といいます。
そして、他人の行為を利用して自己の犯罪を実現する正犯を「間接正犯」といいます。

間接正犯が認められるためには、他人の行為を「自己の犯罪の実現のための道具として利用した」と言えることが必要です。(最高裁決定平成9年10月30日)
今回は、刑事未成年者などの責任能力のない者を利用して窃盗を実行した場合での間接正犯の成立について説明します。

先述したように、間接正犯は、他人を「道具」として利用し、自己の犯罪を実現しようとする行為を対象とするものであるため、利用される者は「道具」として利用されたのでなければならず、たとえ刑事未成年者であっても、是非弁別能力のある者であれば、必ずしも利用者の思い通りに行動するとは限りませんので、「道具」として利用されたとは言えないこともあります。
判例においても、刑事未成年者を利用する場合であっても、それだけで直ちに間接正犯が認められるとしておらず、被利用者の意思が抑圧された状態で犯罪を実行した場合に間接正犯を認めるとしています。

12歳の養女に窃盗を命じてこれを行わせた事件において、被告人が日ごろ養女が逆らう素振りを見せる度に顔面にたばこの火を押し付けたりドライバーで顔をこすったりするなどの暴行を加えており、養女は被告人を怖がって被告人の命令に背くことができない状況を鑑みて、養女は12歳という年齢であり是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人が、意思が抑圧されている養女を利用して窃盗を行ったとして、被告人について窃盗の間接正犯が成立することを認めた判例があります。(最高裁決定昭和58年9月21日)

10歳の少年を利用して他人のバッグを盗ませたという事件において、被告人と少年の関係性や事実関係に照らして、少年が事理弁識能力が十分とはいえない年齢の刑事未成年者であることや、被告人から直ちに大きな危害が加えられるような状態ではなかったとしても、少年の年齢を考えると、日ごろから怖いという印象を抱いていた被告人からにらみつけられ、命令に逆らえない状況にあったとして、少年がある程度是非善悪の判断能力を有していたとしても、被告人には、自己の言動に畏怖し意思を抑圧されている10歳の少年を利用して自己の犯罪行為を行ったものとして、窃盗の間接正犯が成立することを認めた判決もあります。(大阪高裁判決平成7年11月9日)

このように、刑事未成年者を媒介として犯罪が行われた場合、是非弁別能力があっても、意思の抑圧などの事情が存在する場合には、間接正犯が成立すると考えられます。

上の事例では、Aさんは子供が勝手にやったことと主張していますが、Aさんと11歳の少女の関係性や事実関係によっては、Aさんに対して窃盗の間接正犯が成立する可能性があります。

間接正犯が成立するか否かは、事案にもよりますので、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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ストーカー規制法違反事件で示談締結

2021-02-01

ストーカー規制法違反事件で示談を締結した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県北方警察署は、県内に住むAさんをストーカー規制法違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、元交際相手の女性Vさんに復縁を迫る電話やメールを執拗に送り、住居や職場で待ち伏せするなどしており、怖くなったVさんは岐阜県北方警察署に相談しました。
警察署は、Aさんに対し、Vさんに近づかないよう警告を行いましたが、Aさんはその後も同様の行為を繰り返していたため、Vさんは両親とともに再度警察に被害申告をしに行きました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Vさんに謝罪したいと警察に申出ましたが、「今のところ、Aさんの家族と連絡をとりたくない。」と断られました。
Aさんの家族は、今後どのように対処すべきか分からず、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。

ストーカー規制法違反事件

Aさんは、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」といいます。)で禁止されている「ストーカー行為」を行ったとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

ストーカー規制法で禁止される「ストーカー行為」というのは、「同一の者に対し、つきまとい等に掲げる行為を反復してすること」とされています。(ストーカー規制法第2条3項)
ここでいう「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」と規定されています。(ストーカー規制法第2条1項)
その「つきまとい等」の対象行為には、つきまといや待ち伏せ、拒まれたにもかかわらずしつこく電話やメールを送る行為が含まれます。
「つきまとい等」は、恋愛感情等を満たす目的で行われる必要があり、単なる嫌がらせ目的で行われた場合には、ストーカー規制法違反には当たりません。
同じ人に「つきまとい等」を繰り返して行えば、「ストーカー行為」となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。

通常、被害者が警察に相談し、被害者からの申し出がある場合で、相手方によるつきまとい等があり、かつ、今後も繰り返し行われる可能性があると認めるときには、警察は相手方に対してストーカー行為をやめるよう「警告」を行います。
また、公安委員会は、つきまとい等をして、相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為があり、かつ、更に反復してつきまとい等を行うおそれがあると認めるときには、更に反復してつきまとい等をしてはならないと命令することができます。
この禁止命令に反してストーカー行為をした場合には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科される可能性があります。

Aさんのように、いきなり逮捕されるのではなく、最初は警察からの警告にとどまることが多く、警告に反してつきまとい等を繰り返した場合にストーカー規制法違反で逮捕されることが多くなっています。

ストーカー規制法違反事件における示談の効果

ストーカー規制法違反事件では、加害者のストーカー行為により身体的・精神的被害を被った相手方(=被害者)が存在します。
被害者のいる事件において示談が成立しているかどうかは、検察官による終局処分や量刑に大きく影響し得る事情のひとつとなります。

被疑者を起訴するか否かを判断するのは、検察官です。
検察官は、捜査の結果に基づいて、その事件を起訴するか否かを決めます。
検察官は、被疑者が罪を犯したとの疑いがない、若しくは疑いが十分ではないと判断するときは、起訴しない決定(不起訴処分)をします。
また、被疑者が罪を犯したとの疑いが十分であっても、起訴しない場合があります。
それは、犯人の性格、年齢や境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の情況などの諸事情を考慮して、起訴する必要がないと考える場合(起訴猶予)です。
被害者との示談成立は、犯罪後の情況として考慮されます。

ストーカー規制法違反(ストーカー行為)は、2016年の改正前は、親告罪でしたが、改正後は非親告罪となりました。
そのため、検察官は、被害者の告訴がなくても事件を起訴することができます。
しかし、被害者との間で示談が成立している場合には、あえて起訴することはせず、不起訴で事件を終了させます。

そのため、ストーカー規制法違反事件において、事件を穏便に解決するためには被害者との示談交渉が重要となります。

しかしながら、加害者側が直接被害者と交渉することはあまり推奨されません。
というのも、被害者が加害者に対して嫌悪感や恐怖心を抱いているため、直接加害者やその家族と連絡することを拒む傾向にあるからです。
また、加害者側が直接被害者に連絡をとることによって、加害者が被害者に自分に有利なように働きかけている、と捜査機関に判断されてしまう可能性は大いにあります。
そのような事情からも、示談交渉は弁護士を介して行うのが一般的となっています。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもいいとおっしゃる被害者も多く、当人同士にありがちな、やったやっていないの水掛け論になることもなく冷静な話し合いをもつことができます。
また、合意内容をきちんと書面にし、後から争いが蒸し返すことのないようにすることも重要です。

ストーカー規制法違反事件で加害者となり、被害者への対応にお困りの方は、今すぐ刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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